eぶらあぼ 2023.4月号
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《トスカ》(ローマが舞台!)も全く引けを取らない。昨年7月、遂に初来日を果たし、絶賛されたばかりの女王ソニア・ヨンチェヴァが待望となる日本で初のオペラ出演というだけでも嬉しいのに、それが十八番のトスカ役なのだから文句なしだ。そして濃いめの歌と演技が大人気のイタリアが誇る大スター、ヴィットリオ・グリゴーロ(カヴァラドッシ)、昨年のザルツブルク音楽祭のプッチーニ《外套》で主演したロマン・ブルデンコ(スカルピア)と、共演者にもいま聴きたいと思える旬の歌手を見事に揃えた。今年生誕100年となるゼッフィレッリが2008年に手掛けた演出で、日本でイタリア・オペラの最高峰を体感できる公演になること、間違いないだろう。ミケーレ・マリオッティ ©Victor Santiagoアマルトゥブシン・エンクバート ©Laura Scaccabarozziヴィットリオ・グリゴーロリセット・オロペサ ©Jason Homaフランチェスコ・メーリ ©Victor Santiagoソフィア・コッポラ ©Dick Page & James Gibbsロマン・ブルデンコ ©Daniil Rabovskyフランコ・ゼッフィレッリ ©C.M. Falsiniソニア・ヨンチェヴァ ©Thomas Laisné文:小室敬幸《椿姫》9/13(水)、9/16(土)、 9/18(月・祝)各日15:00 東京文化会館《トスカ》9/17(日)15:00 神奈川県民ホール9/21(木)、9/24(日)、9/26(火)各日15:00 東京文化会館2演目セット券(S〜B席)4/13(木)発売単独券(S〜E席)4/21(金)発売※WEBチケット先行発売あり■ NBSチケットセンター03-3791-8888 https://www.nbs.or.jp※日本公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。42ローマ歌劇場 2023年日本公演《椿姫》《トスカ》新音楽監督とスター歌手が勢揃いイタリア・オペラの最高峰を体感! これぞオペラファンが待ち望んだ、海外歌劇場の引っ越し公演だ! 長きにわたり世界トップクラスの音楽を日本に届けてくれていた日本舞台芸術振興会(NBS)が、コロナ禍を乗り越えて4年ぶりに一流歌劇場を招聘する。ミラノ・スカラ座と並び称されるローマ歌劇場は、この10年ほどムーティやガッティといったお馴染みの名匠たちが要職を務めてきたが、2022年11月からは彼らより若い世代、40代半ばの指揮者ミケーレ・マリオッティが音楽監督に就任した。今年もウィーン国立歌劇場やパリ・オペラ座を振る売れっ子であるが、すでにボローニャ歌劇場で10年にわたり首席指揮者(途中から音楽監督を兼任)を務めた実績を買われての起用なのだろう。 マリオッティがとりわけ得意とするのはロッシーニとヴェルディなのだが、彼が振り始めると我々がイメージするよりも細部にしっかりと表情が付けられ、濃厚な感情が立ち昇る。それでいて音楽全体は明晰で絶対にもっさりしないし、硬い音も好まないので、オーケストラから常にイタリアらしい豊穣なサウンドを引き出してくれる若き名匠だ。今まで聴いてきた演奏は何だったのかと思ってしまうほど情報量が多く、イタリア音楽を軽んじている方ほど驚くに違いない。 マリオッティの手にかかると初めて聴くかのように新鮮になると絶賛するリセット・オロペサもまた、今まさに世界中から引く手あまたの音楽家だ。声種はリリック・コロラトゥーラとされるが、《椿姫》のタイトルロールに求められるドラマティックさも兼ね備えており、可憐な容姿も相まって現在、理想のヴィオレッタのひとりといえる。圧倒的な歌の技量が迫真の演技と渾然一体となることで、定番の名作に新たな光があたるはず。共演者もこの20年間、ムーティをはじめとする一流指揮者から指名され続けるフランチェスコ・メーリ(アルフレード)に、30代半ばという若さが信じられないほど豊かな声を聴かせるモンゴル出身のライジングスター、アマルトゥブシン・エンクバート(ジェルモン)と申し分ない。イタリアを代表するブランドの創業者ヴァレンティノが衣裳を担当したことでも話題となった映画監督ソフィア・コッポラの演出は、すでに定評を得た今の時代に相応しいプロダクションだ。 スターばかりという意味では、もうひとつの演目

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