eぶらあぼ 2023.3月号
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アトリエ・アッシュ アートサロンメンバーによる「チェルニー祭り」 前奏曲とフーガ 作品400 CD発売記念コンサート3/22(水)15:00 18:30 豊洲シビックセンターホール問 アトリエ・アッシュ parisharu2006@gmail.comhttps://atelier-h.artInterview伊藤順一(ピアノ)& 黒岩航紀(ピアノ)作曲家チェルニーの才覚を一日で深掘り エチュードで有名なカール・チェルニーの、知られざる? 知る人ぞ知る? 名曲集の「前奏曲とフーガ op.400」。この録音に取り組んだアトリエ・アッシュ・アートサロン(主宰:上田泰史、秦はるひ)のメンバー。そのCD(アールアンフィニ)発売の経緯は本誌2022年12月号で秦にインタビューしたが、この春ついに発売記念コンサートが実現する。しかも前奏曲とフーガのみならず、オール・チェルニーのプログラムは多岐にわたった作品群で、改めてチェルニーの才覚に驚かされる。その舞台裏話を、サロンメンバーのピアニスト2人、伊藤順一と黒岩航紀に訊いた。 「小学校1年生ぐらいから『チェルニー30番』を練習していて、この先まだ何冊もある練習曲集を、まるで漢字ドリルのようだと当時は感じていました。でも今になってみると、“正しく弾くこと”の要素のすべてが詰まっている実感があります。それは指の鍛練だけではなくて、構成感や和声感などすべて」(伊藤)。修行のように弾いていたけれど、いつしか技術が身について実現しているからだ。「三河市民オペラの公演なら聴きたい」というファンは着実に増えている。 5回目の公演となる今回は、ジョルダーノの《アンドレア・シェニエ》。フランス革命で断頭台の露と消えた伝説的な詩人を扱った情熱的な物語は、三河市民オペラの「熱気」に相応しい。森谷真理、上江隼人ら三河市民オペラの「伝説」を作ってきた名歌手たちとも5/6(土)、5/7(日)各日14:00 アイプラザ豊橋問 三河市民オペラ制作委員会 info@mikawa-opera.jp http://www.mikawa-opera.jpいるチェルニー。 「小学校の高学年からチェルニーを始めたので、意外と嫌いではなかったです。その当時からチェルニーの作風には惹かれる部分があって、あれだけの練習曲集を書いたからこそ、後年ショパンやモシュコフスキも練習曲集を書けたのではないでしょうか」(黒岩)。楽譜を深く読んでいくと、随所に見られるチェルニーの時代の先取り。 「コンサートでは連弾曲の『感傷的なソナタ』を弾きますが、こんな洒落たタイトルを付けるところにもチェルニーのセンスを感じます。タイトルどおりのロマンチックな素敵な曲で、シューベルトやブラームスに通じる色合いもあり、今後は他のチェルニー作品も深めていきたいと思っています」(伊藤) 出演者は、国際舞台でも活躍している音楽に熱い面々である。選曲構成に関して様々な意見が出たというのも頷ける。「1回のステージでは無理、皆さんにいろいろ聴いていただきたい」ということから昼と夜の2公演。ピアノ作品だけではなく、フルートやホルCD『チェルニー:12の前奏曲とフーガ 作品400』アールアンフィニMECO-1076 ¥3300(税込)ども、語り継がれる名舞台になるに違いない。ン、弦楽器も登場する文字通り『チェルニー祭り』の一日だ。 「僕は連弾組なので、他の連弾曲のメンバーとの意見交換など触発の連続です。本番までにまた展開が見られる気がします」(伊藤)。「チェルニーはオペラのパラフレーズも上手かったし、フーガの中には合奏の要素もあります。チェルニーの意外な一面に皆さん驚かれるでしょうし、魅力満載のコンサートになると思います」(黒岩)。 苦行のチェルニーではなく名作曲家のチェルニーを、深掘りできるまたとない機会である。2017年公演の様子 ©山本典義伊藤順一 ©Fukaya Yoshinobu取材・文:上田弘子文:加藤浩子黒岩航紀 ©武藤 章72三河市民オペラ 2023年公演 ジョルダーノ作曲《アンドレア・シェニエ》ビジネスマンがプロデュースする情熱のイタリア・オペラ 2017年5月。三河市民オペラ《イル・トロヴァトーレ》の公演に接した筆者は度肝を抜かれた。「市民オペラ」のイメージを大きく超えた、日本最高水準の舞台だったからだ。 新国立劇場以外に公共の歌劇場を持たない日本で、「市民オペラ」はオペラの屋台骨の一つ。そんな中で「三河市民オペラ」は極めて個性的だ。地元のビジネスマンが中心になって制作委員会を立ち上げ、「感動」や「熱狂」をキーワードに、公開オーディションの導入などを通じてレベルアップを図り、数年に1回のペースで高い水準の舞台を

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