eぶらあぼ 2023.3月号
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2/28(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp新日本フィルハーモニー交響楽団 創立50周年記念 特別演奏会 上岡敏之のブルックナー精緻にして壮大なる個性派コンビの集大成 上岡敏之&新日本フィルが奏でるブルックナーの交響曲第8番。これまさに待望の公演というほかない。上岡は、2016年から5年にわたって新日本フィルの音楽監督を務め、数多の名演を残している。彼の一番の特徴は、一からスコアを見直して行う既成概念を排した音楽作りだ。ゆえに新日本フィルでも、吟味された響きによる精緻な音楽を聴かせてきた。その方向性がとりわけ佳き姿で結実したのが、ブルックナーの交響曲であろう。彼らは、同作曲家の第3、6、7、9番を取り上げ、いずれも高い評価を得ている。しかし第8番は、20年9月の定期演奏会にコンビの総決算の意味でプログラミングされながら、コロナ禍で実施が叶わなかった。 今回は、それが遂に「新日本フィル創立50周年記念 特別演奏会」として実現する。「ブル8」は、上岡のたっての希望で、21年9月の定期演奏会に来場した聴衆にリクエストを募り、圧倒的な第1位を得た作品。本公演にはファンの熱い要望も込められている。 ブルックナーの第8番は、深遠で荘厳な響きと壮大なスケール感を持った、彼の交響曲の最高傑作とも称される存在。上岡のブルックナーといえば、2007年ヴッパータール響との90分超えの驚愕最遅第7番の印象が強いが、新日本フィルでは、クリアな彫琢と息長くして自然な流れを保った至福の音楽を生み出している(19年の第7番も約72分半だった)。さて、ブルックナーのすべてが集約された第8番やいかに? 約2年半の時を経て実現する、上岡&新日本フィルの集大成にして1公演限りの特別な時間を、逃してはならない。3/25(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jpになったのである。音も透明に澄んでいる。ときに温かくまどかに。未来はかくして過去への思慕を含む現在になった、私にはそんな気がする。 今回のリサイタルでは、スクリャービンと先達ショパンの「24の前奏曲」を組み合わせて弾く。スクリャービンは初期に凄烈な録音も残しているし、ショパンもかねがね得意としてきたレパートリーである。天才ふたりのカレイドスコープに改めて臨み、ピアノ技巧の粋と曲想の多様さを鏤めた音楽世界を、いまのプレトニョフが時代を越え、どのような心で歌うのかが楽しみだ。文:柴田克彦文:青澤隆明©武藤 章©Rainer Maillard/DG51ミハイル・プレトニョフ ピアノ・リサイタル異端の巨匠 ― その視線の先にある音楽世界 ミハイル・プレトニョフは、未来からやってきた。そんなふうに思えるほど、かつて若き鬼才とみられた彼は、従来の演奏解釈を覆すように、鋭利な表現意欲を大胆に打ち出してみせた。新時代の鮮明な技巧をもって、ピアノという楽器の想像力を超え、音楽とダイレクトな接触を試みるかのように。現代の作曲家として、やがては活動の重心を移すオーケストラ指揮者としての視点も演奏表現に大きく活かしながら。 「ピアニストとしての時代はほぼ終わった」と話していたが、実際、2006年から数年間はピアノ演奏から遠ざかった。しかし、2010年代半ばからピアニストとしての活動を再開したプレトニョフは、来日の都度さらなる驚きを運んでいる。持ち前の尖鋭さと鮮烈なまでの自在さ、強く明晰な透視力はそのままに、それを鋭利な技巧で外向的に放射するだけでなく、ぐっと内省的な濃密さをもって、作品への理解をじっくりと語り始めるよう

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