eぶらあぼ 2023.3月号
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日生劇場場内 1963年10月20日、ベルリン・ドイツ・オペラの引越し公演《フィデリオ》で幕を開けた日生劇場が、今年、開場60周年を迎える。劇場を運営するニッセイ文化振興財団は「届ける(優れた舞台芸術を制作・上演する)」「育む(青少年の豊かな情操を育てる)」「支える(舞台芸術を支える人材を育成する)」という3つの基本理念のもと、オペラやミュージカルのみならずバレエや人形劇など様々な舞台上演を続けてきた。日生劇場といえば誰もが最初に思い出すのが、児童・青少年を対象にした〈ニッセイ名作シリーズ〉だ。その源は、開場の翌年に始まった小学校6年生をミュージカル公演へ無料招待する〈ニッセイ名作劇場〉にさかのぼることができる。2022年11月の時点で、舞台上演を無料で体験した子どもたちの数は、累計で800万人に達しているという(かくいう私も〈名作劇場〉で初めて日生劇場を訪れたひとりだ)。日生劇場の歴史は、まさに、日本という西洋から遠く離れた国で人々がどのように西洋発祥の舞台芸術を受け止め、愛し、育んできたかを物語っている。そんな日生劇場の開場60周年記念の主催公演には、現在、舞台芸術の様々なジャンルで活躍する人々が結集。この劇場のアニバーサオペラと児童文化を柱に歴史を重ねてきた劇場の新たな一歩文:室田尚子リーにふさわしい、意欲的かつエンタテインメント性にもあふれる作品が並んだ。 1985年から続いている〈NISSAY OPERA〉シリーズは3作品が上演される。もっとも注目されるのは、ケルビーニ作曲《メデア》の日本初演だろう。18世紀末から19世紀の初めにパリで活躍した作曲家ルイージ・ケルビーニが、ギリシャ悲劇を題材に人間の情念を緻密に描いた作品で、長らく忘れられてきたが、1953年にマリア・カラスが歌ったことでオペラ史によみがえった。近年イタリア・オペラの世界で大活躍の園田隆一郎の指揮のもと、岡田昌子、中村真紀というふたりのドラマティック・ソプラノをタイトルロールに起用。また開場50周年作品《リア》以来10年ぶりの日生劇場登場という演出の栗山民也が、このオペラ史上屈指の問題作をどう描き出すのか、期待がかかる。 人間心理を鋭く描き出すヴェルディの《マクベス》も楽しみな一作。様々な時代、様々な作曲家のオペラを上演している日生劇場だが、意外にもヴェルディ作品は1970年以来53年ぶりだという。演出は日生劇場芸術参与の粟國淳。そしてびわ湖ホール芸術監督として辣腕を振るってきた沼尻竜典がタクトをとる。タイトルロールには、今井俊輔、大沼42日生劇場 開場60周年記念ラインナップ節目を飾る珠玉の6作品に日本を代表するクリエイター陣が集結

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