7/14(金)、7/15(土)、7/16(日)、7/17(月・祝)、7/19(水)、7/20(木)、7/22(土)、7/23(日)各日14:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール2/26(日)発売■ 芸術文化センターチケットオフィス0798-68-0255https://www.gcenter-hyogo.jp/giovanni/※公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。左より:佐渡 裕 ©Takashi Iijima/ジョシュア・ホプキンズ ©Simon Pauly/大西宇宙 ©Simon Pauly/ルカ・ピサローニ/平野 和 ©Akira Muto/アレクサンドラ・オルチク ©Karpati & Zarewicz/小林沙羅 ©NIPPON COLUMBIA「幾つもの顔を持つ名バリトン」なのだ。だからこそ、なかなか尻尾を掴ませない美男の騎士役には相応しい。第2幕の名曲〈セレナーデ〉など、彼一流のしっとりした歌いぶりにぜひ注目してほしい。 一方の大西は、「自らの華を知る男」。海外での活躍も目覚ましい彼は、生真面目さを心に忍ばせながらも、演技に「外連味」を盛り込むことが上手い。なればこそ、閃光のように輝くスター性を今回も発揮するだろう。第1幕の名曲〈シャンパンの唄〉を彼が華々しく歌い上げるさまに期待できそうだ。 さらに今回は、主人公を取り巻くキャスティングも注目の的。騎士に振り回される従者レポレッロはベルカントの大歌手ルカ・ピサローニとウィーンで活躍中の平野和が競演。ちゃっかり者の村娘ツェルリーナには、コロラトゥーラの注目株アレクサンドラ・オルチクと日本のプリマドンナ小林沙羅という贅沢な顔合わせ。邦人勢ではほかにも、高野百合絵(ドンナ・アンナ)、池田香織(ドンナ・エルヴィーラ)、城宏憲(ドン・オッターヴィオ)などみな最前線の歌手ばかりだが、そうした強力な配陣に加えて、我が国にも馴染み深い米国の演出家、デヴィッド・ニースが、クラシックな舞台作りを通じて名作をさらに掘り下げ、客席の一人ひとりに忘れ難い一瞬をもたらすよう、心から願っている。文:岸 純信(オペラ研究家)40兵庫から世界へ! 第一線で活躍するキャストが彩るモーツァルトの傑作オペラ 「ダーク・ヒーロー」には背徳的な魅力がある。社会を騒がせ、反道徳的な振る舞いに終始するのに、なぜか目が離せないヤツといったところ。洋の東西を問わずそういうキャラクターは居る。日本の歌舞伎にも、色悪といって「外面はハンサム、中身は性悪」の人物像が出てくるが、この色悪をオペラで探したら、それは何よりドン・ジョヴァンニ。モーツァルトが音で肉付けした放蕩の騎士をおいてほかには無いだろう。 貴族階級の出身だけに、彼の物腰は上品で爽やか。でも、まあとにかく嘘を吐く。朝から晩まで女性を誘惑することしか頭になく、口調も常に軽い。だから、オペラでは稀なことに、堂々たる題名役ながら歌うアリアは「短編の曲」ばかり。主役なら普通は想いを滔々と述べるものだが、彼の生きかたは刹那的。「長く歌っている間に、美女が通り過ぎたらどうするんだ!」とでも言いたいのだろう。 この7月、兵庫県立芸術文化センターでは、楽壇の最前線に立つマエストロ、佐渡裕がこのオペラに挑む。マエストロ曰く、主人公の「行き着くところまで行ってしまう欲望の凄み」が何より印象的なのだとか。となると、ダブルキャストによる主役の人選にも納得がいく。何しろ、全身から「際立つ色気」を滲ませねばならないのだから。その一人はカナダの名歌手ジョシュア・ホプキンズ、そしてもう一人が、日本オペラ界の最右翼、大西宇宙である。 素顔のホプキンズは飄々とした面差しだが、実は、衣裳やヘアメイクで全くの別人になり切る名手。艶々としたあの美声を聴かず、舞台写真を見るだけでは彼と気付かないこともあるぐらい。いわば、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2023 歌劇《ドン・ジョヴァンニ》(新制作)
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