eぶらあぼ 2023.3月号
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第8回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門優勝 中野りなSACD+DVDCDCDCD128高崎芸術劇場/大友直人が、リサイタル・録音・映像によって若手演奏家を多角的に紹介する「T-Shotシリーズ」の第8弾。東京藝大やトロント王立音楽院で研鑽を積み、ビバホールチェロコンクール第1位ほか数々の受賞歴を誇る、柴田花音(2000年生まれ)のデビュー盤である。柴田は自由自在でのびのびとした演奏を展開。しなやかで情熱的なシューマン、高い技術と豊かな表現力を明示したヒンデミットやプロコフィエフ、緊迫感が漲るシュニトケなど、どれも聴き応えがある。鈴木慎崇の鮮やかなピアノも特筆物。溢れる才能を満喫できる好ディスクだ。(柴田克彦)同一音型の反復は生理的に心地よい。そのことを作曲家は古今の別なくよく知っていて、創作に生かしてきた。ロマニウクは本作で、バロックから現代まであらゆる時代からこの反復に主眼を置いた彼自身の即興演奏も含む21作品を選び、ヴァージナルからシンセサイザーまで6つの楽器で弾き分けている。しかもバッハに電子ピアノなど、楽器のチョイスも時代に合わせるのではなく、ロマニウクのインスピレーションが優先される。固定概念を捨て、素材にしなやかに迫っていくその指先は感覚を刺激し、生理に語りかける。そこにあらゆる情報が並置される現代という時代相が鮮やかに浮かんでくる。(江藤光紀)気鋭のフリューゲルホルン奏者(佐藤秀徳)とヴィブラフォン奏者(相川瞳)の共演盤で、しかもそれぞれが書いたオリジナル作品を中心としながらも(聴き手を選ばずに)心を掴まれる楽曲に溢れた魅惑の一枚。モリコーネ風“愛のテーマ”のような「だいだいの記憶」(佐藤)も印象的だが、コンビニ等で買えるお菓子たちが登場する「スイーツ組曲」(相川)も楽しい。ヴィブラフォン曲「ササヤキ」(佐藤)のピアニスト・Momoによる編曲版を3人で演奏した別バージョンも素晴らしい。タイトル曲「おこった月」(佐藤)のミニマル風な第3楽章も素敵だ。 (東端哲也)昨年6月の仙台国際音楽コンクールのファイナルと入賞者記念ガラコンサートのライブ録音。優勝の中野りなは当時17歳。その前年には日本音楽コンクールも制覇した、特別な注目を集める若き俊才だ。すでに大器の片鱗は存分に示されていて、伸びやかな歌、澄みきった音色、要所でみせる張りつめた高揚感が印象に残る。モーツァルトの節度ある表現と技巧的なカデンツァの輝かしさの対比。バルトークは“民族性”に惑わされず、あくまで誠実に音楽的に構築、かつ驚くべき精度と完成度をみせる。今後さらに感情表現の幅が広がり、代表的名手になっていくであろう中野。その10代の貴重な記録となる。(林 昌英)高崎芸術劇場 大友直人Presents T-Shotシリーズ vol.8 柴田花音 IN CONCERTシューマン:アダージョとアレグロ/ヒンデミット:無伴奏チェロ・ソナタ op.25-3/シュニトケ:チェロ・ソナタ第1番/プロコフィエフ:チェロ・ソナタ ハ長調 他柴田花音(チェロ)鈴木慎崇(ピアノ)モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 イ長調 K219/バルトーク:ヴァイオリン協奏曲 第2番中野りな(ヴァイオリン)広上淳一(指揮)仙台フィルハーモニー管弦楽団J.S.バッハ(ロマニウク編):「リュート組曲」より〈前奏曲 ホ長調〉/ペンギン・カフェ・オーケストラ/サイモン・ジェフス(ロマニウク編):パーペテュム・モービル/Parabola 放物線(ロマニウクによる即興)/カプスベルガー(ロマニウク編):トッカータ・アルペッジアータ 他アンソニー・ロマニウク(ピアノ/チェンバロ 他)ALPHA/ナクソス・ジャパンNYCX-10374 ¥3300(税込)オクタヴィア・レコードOVCX-00094 ¥3630(税込)収録:2022年6月、日立システムズホール仙台(ライブ)フォンテックFOCD9875 ¥2640(税込)Perpetuum 〜無窮動/アンソニー・ロマニウクTHE ANGRY MOON/佐藤秀徳&相川瞳佐藤秀徳:だいだいの記憶、ササヤキ、おこった月/相川瞳:冷蔵庫のマトリョーシカ、3 Dances、スイーツ組曲/佐藤秀徳(Momo編):ササヤキ feat.Momo/チョーンシー・オルコット(Momo編):My wild irish rose 他佐藤秀徳(フリューゲルホルン)相川瞳(ヴィブラフォン)Momo(ピアノ)コジマ録音ALCD-7290 ¥3080(税込)

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