eぶらあぼ 2023.3月号
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CDCDCDCD126これまでピアニストのマスターピースを中心に録音してきたチョ・ソンジンが、演奏機会の多くないヘンデルのチェンバロ組曲をリリース。現代のピアノで弾くにあたり、音の粒立ちや各声部の際立たせ方、強弱や歌わせ方の自由度といった各面で絶妙なバランスをとり、清々しく現代的なヘンデルの音楽を示した。ブラームス「ヘンデルの主題による25の変奏曲とフーガ」では、ダイナミクスの幅、音の重みをしっかり変え、2世紀の時の流れを的確に反映。キャリアが確かなものとなった正統派ピアニストが、今自ら“発見”した音楽の魅力を伝えることに挑んだ、意欲的なアルバム。 (高坂はる香)クラシックのみならず多彩なジャンルでクラリネット、サックス、さらにはキーボードをも見事に演奏してしまう期待の若手アーティスト・大野まりかのデビューアルバム。前半ではピアノ伴奏によるクラシックを、そして後半ではドラムス、エレクトリックベース、ピアノを従えての自作曲バンド演奏という挑戦的な(!)構成だが、クラシックではしっとりとした美音と滑らかなテクニックを駆使して卓越した演奏を披露(特に「ラプソディ・イン・ブルー」での表現力に注目!)、そして後半ではグロウル奏法も取り入れてのスウィンギーな、あるいはリリカルなプレイでリスナーを魅了。瞠目の一枚だ。(藤原 聡)2022年9月に逝去したフォークトの遺作。まずは2つのピアノ三重奏曲とヴァイオリン、チェロの名曲を収録した充実の構成が光っている。ドイツのミドル世代の名手3人のアンサンブルは“絶妙”の一語。表情こまやかなやりとりに終始魅了されるし、フォークトの珠玉のようなピアノにはとりわけ感嘆させられる。ピアノ三重奏曲第1番は天国的で滋味豊かな演奏が展開され、「ノットゥルノ」は繊細な美感が横溢した最高の名演。ピアノ三重奏曲第2番は力感と生彩に富んでおり、デュオ曲も濃密で生き生きしている。シューベルトの魅力に浸れるお薦めのアルバム。(柴田克彦)白石光隆のセンスが光る小品集。2021年9月8日東京文化会館でのライブ録音だ。抒情的なJ.S.バッハの「ラルゴ」で心をほぐされ、ベートーヴェンの「熱情」ではあらためてこの作品のスケールの大きさを知る。トレネのシャンソンに基づく「6つの歌曲」ではガラリと洒落た雰囲気となり、R.シュトラウスの《サロメ》より「7つのヴェールの踊り」で妖艶なトーンとなる。ローゼンブラットがシューマンの「トロイメライ」をジャズ風にアレンジしたアンコールピース「ドリーミング」で締めくくり、“人生とはこんなものさ”と愛と微笑を投げかけるかのような一枚。  (飯田有抄)J.S.バッハ(サン=サーンス編):ラルゴ/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」/トレネ(ワイセンベルク編):「6つの歌曲」より〈街角〉/R.シュトラウス(ジンガー編):歌劇《サロメ》より「7つのヴェールの踊り」/ローゼンブラット:ドリーミング 他白石光隆(ピアノ)ヘンデル:組曲第2番 ヘ長調、同第8番 ヘ短調、同第5番 ホ長調、サラバンド 変ロ長調、メヌエット ト短調(ヴィルヘルム・ケンプ編)/ブラームス:ヘンデルの主題による25の変奏曲とフーガ 変ロ長調チョ・ソンジン(ピアノ)バッシ:オペラ《リゴレット》による演奏会用幻想曲/ウェーバー:グランド・デュオ・コンチェルタント 変ホ長調/ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー/大野まりか:鏡、Colorful、Sourire大野まりか(クラリネット)渡辺友梨香(ピアノ)J-MAD NOVAコジマ録音ALCD-3130 ¥2570(税込)シューベルト:ピアノ三重奏曲第1番、同第2番、ノットゥルノ、ロンド、アルペジオーネ・ソナタ イ短調ラルス・フォークト(ピアノ)クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)ターニャ・テツラフ(チェロ)ONDINE/ナクソス・ジャパンNYCX-10376(2枚組) ¥4400(税込)ユニバーサル ミュージックUCCG-45069 ¥3080(税込)収録:2021年9月、東京文化会館(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4514 ¥3300(税込)ヘンデル・プロジェクト/チョ・ソンジン鏡と私/大野まりかシューベルト:ピアノ三重奏曲集 他/ラルス・フォークト&クリスティアン・テツラフ&ターニャ・テツラフアパッショナータ/白石光隆

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