eぶらあぼ 2023.3月号
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CDCDSACDCD122近年、時代楽器への関心を高めているシフが、クラヴィコードでJ.S.バッハの鍵盤作品を録音した。使用楽器は1743年製Ph.-J.スペッケンのクラヴィコードのレプリカ。リュートのように親密で繊細な音色を持ちながら、歯切れよいタッチで扱えば打楽器的な響きも生む。この楽器でシフは、カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」という親しき者との別離を描いた作品で開始し、「インヴェンション」と「シンフォニア」の音楽的な魅力を遺憾なく伝える。「半音階的幻想曲とフーガ」はギター音楽のような哀愁も帯びた「幻想曲」と、どこか神秘的な緊張感をもつ「フーガ」を聴かせる。(飯田有抄)21世紀の“キング・オブ・テノール”カウフマンとフランスが誇る現代の名バリトン、テジエ…2010年パリ国立オペラの《ウェルテル》以来、何度も共演を重ねプライベートでも親交の厚い同世代の名手ふたりによるセッション録音盤がついに登場。13年にバイエルン国立歌劇場でも魅せた《運命の力》での“決闘”の再現から、《ドン・カルロス》(つまりフランス語版)や《ラ・ボエーム》における熱い“友情”、そして待望のオテッロ&ヤーゴの緊張感マックスの“駆け引き”まで、イタリア・オペラにおける男声デュオの最高場面が盛り沢山。しかもパッパーノ&サンタ・チェチーリア管の演奏で!(東端哲也)壮大なプロジェクトが、いよいよ最終盤へ。日本センチュリー交響楽団が、首席指揮者の飯森範親とともに取り組んでいる「ハイドンマラソン」。2015年にスタート、104の全交響曲を8年かけて披露し、録音も行う。18枚目となる当盤には、21年4月に開かれた第23回のステージから、エステルハージ宮廷楽団の副楽長に就任したばかりの28歳前後に書いた3曲を収録。回を重ねるごとに、弦のヴィブラートや管のアーティキュレーションなど、時代特有の作法も、いっそう自然に。今回は特に、ホルン・セクションの好演(とりわけ第5番)が印象的。若きハイドンの息吹が体感できる。(笹田和人)盟友、反田恭平と務川慧悟のデュオによる録音の第2弾。ルトスワフスキ「パガニーニの主題による変奏曲」は、輝かしくバネのある音の重なり、自然な起伏で、楽曲の美点とすばらしさを教えてくれる。ブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」は、信頼し合う二人が緻密にサウンドを混ぜ合わせることで、あたたかい音楽が広がる。ここまでは2台ピアノ演奏で、フォーレ「ドリー」のみ連弾。息の合った音楽の運びとともに、響きが膨らんではしぼむ。いずれの楽曲にも、互いに連携しながら曲の世界を気持ちよく泳いでゆくような滑らかな勢いを感じ、聴くと明るい気持ちになる。(高坂はる香)J.S.バッハ:カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」 BWV992、インヴェンション BWV772〜786、4つのデュエット BWV802〜805、「音楽の捧げもの」 BWV1079より〈3声のリチェルカーレ〉、シンフォニア BWV787〜801、半音階的幻想曲とフーガ BWV903アンドラーシュ・シフ(クラヴィコード)ハイドン:交響曲第3番、同第15番、同第5番飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団ルトスワフスキ:パガニーニの主題による変奏曲/ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲/フォーレ:ドリー組曲反田恭平 務川慧悟(以上ピアノ)NOVA RecordNR-02301 ¥3300(税込)オペラ・デュエット集/ヨナス・カウフマン&リュドヴィク・テジエヴェルディ:《運命の力》より〈私には許されない、一時の安らぎを味わうことも〉、《オテッロ》より〈貴様か?!さがれ!立ち去れ!〜今はもう、そして永遠にさらばだ、神聖なる思い出よ〜夜のことでした、カッシオは眠っており〜そうだ、不動の天にかけて誓う!〉 他ヨナス・カウフマン(テノール) リュドヴィク・テジエ(バリトン) アントニオ・パッパーノ(指揮) ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団ソニーミュージックSICC 2240 ¥2860(税込)ハイドン:交響曲集 Vol.18/飯森範親&日本センチュリー響ユニバーサル クラシックス/ECM RecordsUCCE-2100/1(2枚組) ¥5280(税込)収録:2021年4月、ザ・シンフォニーホール(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00804 ¥3520(税込)J.S.バッハ:クラヴィコード/アンドラーシュ・シフTwo Pianos 2/反田恭平&務川慧悟

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