eぶらあぼ 2023.2月号
68/153

2/24(金)19:00 大阪倶楽部 2/28(火)19:00 東京文化会館(小)3/5(日)14:00 都城市ウエルネス交流プラザ ムジカホール 問 トリオ・ヴェントゥス trioventus03@gmail.com https://www.trioventus.comいったものだと思いますが、それを求め、伝えたくてシューベルトは作曲したのだと思います。そうした音楽の“真実”というものが、コロナ禍で荒んでいた自分の心に沁みてきました」 今回のCDは、非常に凝縮した表現の中から、曲のエッセンスが滴り落ちてくるように感じられるのが特徴だ。また、ライブ録音かと思うほど音楽に推進力がある。 「例えば1曲目〈おやすみ〉から4曲目〈氷結〉がひとつのまとまりとなり、5曲目の〈菩提樹〉で少し雰囲気が変わる、というように、24曲を何曲ずつかのまとまりと考え表現しました。そのため、まず全体のテンポ設定は通常より速めにし、曲間もまとまりの中では短くしています。こうしたアイディアは妻であるピアニストの小百合が出してくれました」 平野が初めて「冬の旅」に出会ったのは18歳の時。最初は100%は理解できなかったものの、その後自分で演奏していくうちに「冬の旅」の世界に入り込み、今やこの作品なしには自分の人65(バスバリトン)CD『シューベルト:冬の旅』日本アコースティックレコーズNARD-5081 ¥3080(税込) 1/21(土)発売※1トラックを無料オンライン試聴できます! 詳細はP.76をご覧ください。オによる表現力の奥深さと心地よさを知らしめる。生はありえない、というほど大きな意味を持つものになった。「自分の存在意義を示したいという大きな思いがこの録音になった」という言葉通り、平野和という歌手の核を作る音楽表現に接することができる。来る8月3日にはリート・リサイタルも決定している。平野和から当分目が離せなくなりそうだ。左より:石川武蔵、廣瀬心香、鈴木皓矢文:笹田和人©武藤 章Interviewトリオ・ヴェントゥス(ピアノ三重奏団) リサイタル ツアー 2023メンデルスゾーンを軸にしたプログラムで3都市を巡るリサイタルを開催し、同年10月には初 廣瀬心香(ヴァイオリン)や鈴木皓矢アルバム『Schubert & Shostakovich』(チェロ)らベルリンで活動していたをリリース。22年にも国内3都市でリ若手奏者により2019年に結成され、精サイタルを開き、好評を得た。力的に快演を披露しているピアノ三重 今回は、メンデルスゾーンの第2番を奏団「トリオ・ヴェントゥス」。このほど、はじめ、ラヴェル(大阪、東京)、シューベパリ国立高等音楽院に学んだ石川武ルトの第2番(宮崎)、さらにトリオ・ヴェ蔵(ピアノ)がメンバーに加わり、“新生ントゥスが委嘱し、22年1月の東京公ヴェントゥス”として初となる、東京、大演で初演した鈴木輝昭の第2番(大阪)阪、宮崎の3都市を巡るツアーを敢行、瑞々しい響きを紡ぐ。と、多彩なピアノ三重奏曲を披露。トリ 「VENTUS(ヴェントゥス)」は、ラテン語で“風”の意味。「3人で一つの大きな風を巻き起こそう」と名づけたという。2020年に東京文化会館でデビュー・平野 和■■■ヨーロッパ・デビュー15周年、初アルバムに込められた「冬の旅」への想い取材・文:室田尚子 ウィーン・フォルクスオーパーの専属歌手を14年務め、現在も同劇場を中心にヨーロッパで活躍するバスバリトンの平野和が、欧州デビュー15年にして初のCDをリリースする。2021年7月、東京・Hakuju Hallでの全曲演奏会に続いて挑んだのはシューベルトの「冬の旅」。その背景には、コロナ禍が大きく横たわっていた、と平野は語る。 「コロナ禍によって生活が遮断された結果抱いた孤独感や疎外感が、『冬の旅』の世界観に通じるものがあると感じました。ウイルスに覆われた世界が雪や氷に閉ざされた冬の世界と合致し、今ならば主人公の心情をストレートに表現できると思ったんです。それともう一つ、私に歌のイロハを教えてくださった恩師の末芳枝先生がコロナにより急逝されたことも大きかったです。死による人と人との別れを経験し、今こそ『冬の旅』を歌える、いや、今だからこそ歌わなければならないという使命感が芽生えたのです」 確かに、「冬の旅」の根底には常に「死」がある。コロナで大切な人を失うという経験をした平野にとって、改めて音楽を通して「死」と向き合うことは必要なプロセスだったのかもしれない。 「『冬の旅』は世界観としては暗いですが、暗いだけで終わるのではなく、その先にある何か、それは希望や憧れと

元のページ  ../index.html#68

このブックを見る