eぶらあぼ 2023.2月号
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第146回 アンサンブル of トウキョウ 定期演奏会ボヘミア音楽の奥深さを名手たちがひも解く アンサンブル of トウキョウが、2月20日、東京文化会館小ホールで第146回定期演奏会を開く。今回のテーマは「ボヘミアが開く音楽の窓、時を超え伝わる情熱の呼吸」。プログラムにはドヴォルザークをはじめとするボヘミアの作曲家たちの室内楽作品が並ぶ。 アンサンブル of トウキョウは1986年にフルート奏者、金昌国の呼びかけにより結成された、国内外で活躍する実力者たち18名によるアンサンブル。年4回の定期演奏会を開催し、毎回作品に応じてさまざまな編成がとられる。今回はヴァイオリンの小林美恵61Interview牛田智大(ピアノ)挑戦を続ける若き才能が新たなレパートリーに挑む 12歳でのデビュー以降、常に世界的な演奏活動を展開し続けるピアニストの牛田智大。着実にキャリアを積み重ねながら、謙虚に学ぶ姿勢を忘れない音楽へのひたむきさ、奏でられる音色の品格と美しさは多くの人々の心を掴み続けている。ここ数年はショパンに集中的に取り組んできた牛田だが、新しい年を迎えてのリサイタルではシューベルトにシューマン、ブラームスの3人の独墺作曲家によるソナタを集めたプログラムを演奏する。 「2021年まではショパンが晩年に書いた、生と死の境を行き来するような作品を中心に弾いていました。そこで今回は明るさ、若さに満ちたエネルギーを感じる曲を並べようと思ったのです。また、これまでドイツ語圏の作品を公開の場で演奏する機会があまりなかったので、これを機に弾きたいなと」 シューベルトの第13番、シューマンの第1番にブラームスの第3番はいずれも作曲家たちが20代前半の時の作品。現在の牛田の年齢と非常に近い。今だからこそ見える景色というものもあるだろう。彼はこれらの作曲家にはかねてからシンパシーを感じていたという。 「10代半ばの頃から、特にシューマンについてはプログラムのメインに据えて演奏をしていきたいと思っていましと戸原直、ヴィオラの田原綾子、チェロの松本卓以によるドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」をはじめ、クラリネットのローベルト・ボルショスらによるクロンマーのクラリネット四重奏曲変ホ長調や、フルートの村上成美らによるライヒャの「モーツァルトの主題による18の変奏曲と幻想曲」、マルティヌーのヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲「3つ2/20(月)19:00 東京文化会館(小)問 アンサンブル of トウキョウ事務局045-595-0223 https://www.ensembleoftokyo.comたが、まだ演奏するには早いと思いあえて弾くのを避けてきました。しかし、ショパンを集中的に弾き、様々な技術を学んだ今ならば、この3人の作品を魅力的に演奏することができるようになったのではないかと思ったのです」 今回選ばれた作品は、これまで弾いてきたショパンとはかなり違う世界が広がる。演奏スタイルや音づくりなど、アプローチは変わってくるのだろうか。 「もちろんショパンの作品で使う音色とは違うものになると思いますが、書かれたすべての音が等しく重要という点は同じですし、向き合い方は変わりません。むしろロシアものやフランスものを弾くときの方が音の優先順位を考えるなど、違うアプローチになります。自分の中で、ショパンから今回の3人の作曲家への移行はとても自然でしたし、これまで律していた部分を開放できるところもあり、非常にや牛田智大 ピアノ・リサイタル3/16(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp左より:小林美恵/田原綾子/ローベルト・ボルショスのマドリガル」といった多彩な楽曲が演奏される。ボヘミアの音楽の奥深さに触れることができそうだ。りやすかったです」 2023年は、シューマンの協奏曲を初めて披露するという。さらに記念年を迎えたラフマニノフの協奏曲も決定している。今後は室内楽にも挑戦していきたいと語っており、牛田の新たな一面にたくさん出会える年となりそうだ。取材・文:長井進之介©Ariga Terasawa文:飯尾洋一

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