eぶらあぼ 2023.2月号
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第358回 定期演奏会 2/17(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp2/1(水)19:00 すみだトリフォニーホール(小)問 K国際コンクール03-6661-1733 http://k-concours.org60川瀬賢太郎 ©Yoshinori Kurosawa 指揮は川瀬賢太郎。神奈川フィル常任指揮者を長く務め、本年4月からは名古屋フィル音楽監督に就任。30代ながら若手という枠を超えた活躍をみせる川瀬、東京シティ・フィル定期登場は2019年5月以来で、好調の楽団との再会が楽しみだ。協奏曲ソリストは郷古廉。若手を代表するヴァイオリニ村上敏明郷古 廉 ©Hisao Suzukiストであり、昨年からNHK交響楽団ゲスト・アシスタント・コンサートマスターに就任して目に触れる機会も多くなった。実は両者は20年3月に神奈川フィルでマクミランを演奏予定だったが、残念ながら中止に。彼らの思いもこもる同曲と川瀬得意の「幻想」、確実に熱い演奏会になる。田崎尚美る一方で柔軟性が失われ、高音が苦しくなるテノールが多いなか、村上にかぎっては表現のフレキシビリティが損なわれず、輝かしいハイCは力強さを増している。シェニエはいまの村上のような声でこそ聴きたい役なのだ。 しかも、マッダレーナ役は日本を代須藤慎吾文:林 昌英文:香原斗志松田祐輔表するドラマティック・ソプラノで、劇的表現と気品を兼ね備える田崎尚美、ジェラール役は日本を代表するバリトンで、この役の第一人者の須藤慎吾。松田祐輔のピアノに支えられ、抒情的なアリアも情熱的な重唱もどれだけ輝くことだろうか。濃い一夜である。川瀬賢太郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団弔いと祝祭が交錯する21世紀の響きを、世代を代表する二人が紡ぐ 2月の東京シティ・フィル定期で、作曲年代が約2世紀離れた2作品の“新しい響き”を楽しむ。前半はイギリスの作曲家ジェームズ・マクミラン(1959~)のヴァイオリン協奏曲。2010年初演、前衛的ではなく聴きやすい作風だが、サウンドは凝っている。きらめくような多数の打楽器群にピアノが加わるオーケストラの音響(まさかの「声」まで!)はまさに現代的。母親の死の後に作られた作品で、「ダンス」と「ソング」を掲げた3つの楽章は新しくもどこか懐かしさがあり、ヴァイオリンの技巧性と歌謡性を引き出す。後半はベルリオーズ「幻想交響曲」。1830年、ベートーヴェン没後3年という時期に生まれた本作は、楽器編成も内容もそれまでの音楽から大きく飛躍した、斬新にして巨大な革命的傑作。21世紀作品の後に聴いても、約200年前の本作の衝撃とパワーはいささかも色あせないはず。村上敏明 テノールリサイタル日本歌曲と《アンドレア・シェニエ》、二度おいしい充実の一夜 いま脂が乗り切った日本を代表するテノール、村上敏明。その魅力を2方向から味わい尽くせるリサイタルだ。 第1部では、彼の日本歌曲を聴けるのがうれしい。村上が歌う日本の歌は言葉がじつに明瞭だが、それは歌心を大切にしているからにほかならない。日本語では子音と母音の組み合わせが五十音に整理され、1つの音に1拍が充てられる。最近の流行歌はこの拍の原則を無視しがちだが、日本の叙情歌や愛唱歌は、「この道はいつか来た道」という歌詞なら12拍で歌ってこそ、言葉が生命を得て聴き手の心に染み入る。そのように歌って詩情を表現できる歌手が村上である。 それが第2部はガラリと変わり、ジョルダーノのオペラ《アンドレア・シェニエ》をハイライトで楽しめる。フランス革命後の混乱のなか処刑される情熱の詩人シェニエは、音圧の高い声でドラマティックに歌われる役。円熟す

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