eぶらあぼ 2023.2月号
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57Interview福間洸太朗(ピアノ)こだわりのプログラムで創るバラエティ豊かな夜の世界 ピアニストの福間洸太朗は、世界各地での演奏活動をはじめ、多彩なレパートリーを活かしたプログラムのレコーディングも重ね、ピアニストとしての技術、音楽性を深めてきた。近年では知られざるピアノ曲を名演奏家の演奏で紹介する「レア・ピアノミュージック」をプロデュースするなど、新たな試みにも積極的。常にひらめきに満ちた彼のリサイタルは創意に溢れたテーマ性を持っており、今回も「夜」をテーマに、福間らしさが随所に見られるプログラムを届けてくれる。 「あまのじゃく精神を発揮して(笑)、アフタヌーン・コンサートにあえて“夜”をもってきました。また、2023年のナントのラ・フォル・ジュルネ(LFJ)のテーマが“夜”ということで、そこで演奏するプログラムをもとにしています。前半はLFJで演奏する楽曲で、後半は今回の日本とパリでのリサイタルのためにセレクトしたものです」 前半はバッハにモーツァルト、シューマンなどドイツ系の作品が並び、後半にはフォーレにドビュッシー、ラヴェルといったフランス系の作品に加え、ショパンが選ばれた。新たに演奏する曲も多いという。 「フォーレのノクターン第5番は初披ヤン・ゼーメン、イワン・ヴォカーチ。チェコ・フィル団員でもあるヴォカーチは、なんとジャズやタンゴのピアニストとしても活動中で、本公演でもピアソラ作品でピアノを披露する。全員が多才なチェリストたちだが、根本にあるのは温かく歌心2/21(火)19:00 琉球新報ホール2/23(木・祝)14:00 ヤマハホール2/24(金)19:00 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ問 メロス・アーツ・マネジメント03-3366-8356 https://www.melosarts.jp露ですし、ラヴェルの『夜のガスパール』の〈オンディーヌ〉も日本では初めて演奏します。19歳のときにコンクールで弾いて以来なので、かなり久しぶりに挑む楽曲です」 「夜」をテーマにしたプログラムだが、決して静かな作品や瞑想的なものばかりではない。実にバラエティ豊かな雰囲気の作品が並んでいる。このあたりにも福間ならではのこだわりが詰まっている。 「J.S.バッハ=ジロティの『G線上のアリア』やシューマンの〈トロイメライ〉(『子供の情景』より)などは、穏やかな夜の様相が見えるものですが、モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』やグリュンフェルトの『ウィーンの夜会』は、宮廷の娯楽や舞踏会の様子など、当時ならではの夜の風景を感じていただけるものとして入れました。また、ドイツとフランスや、ショパンとフォーレ、二人による“ノクターン”など、様々な対比もお楽しみいただきたいと思っています」 なお、今回演奏される「アイネ・クラアフタヌーン・コンサート・シリーズ 2022-2023 福間洸太朗 ピアノ・リサイタル3/4(土)13:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jpにあふれたチェコの弦の音色。その幸福感を各地で味わえる、嬉しい好機となる。イネ・ナハトムジーク」は福間による編曲作品となる。華麗さと繊細さをあわせもつ彼のピアニズムが活きた編曲に期待が膨らむ。演奏家としてはもちろんだが、編曲家としてもますます進化を遂げていく福間の今後に注目していきたい。取材・文:長井進之介文:林 昌英©T.Shimmuraプラハ・チェロ・リパブリック 2023名手4人の温かくも切ない弦の音色がステージを包む チェコを代表するチェロ・アンサンブルだった「プラハ・チェロ・カルテット」の中心メンバー3名に新たな奏者が加わり、2022年に新生チェロ四重奏団として「プラハ・チェロ・リパブリック」が誕生。前身のビジョンを受け継ぎながら、クラシックからポップスやロック、映画やミュージカル・ナンバーなど、より多彩なジャンルのレパートリーとユーモアを交えた新しいステージを作りあげている。昨年9月には来日公演を果たして大成功、早くも2月に再来日して、関東から沖縄にかけての日本ツアーが実現する。 4人はチェコを中心に活躍するペトル・シュパチェク、マチェイ・シュテパーネク、

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