eぶらあぼ 2023.2月号
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第967回 定期演奏会Bシリーズ 2/14(火)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp2/14(火)13:30 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp53ヤン・パスカル・トルトゥリエりが壮大なスケールで炸裂する尖った作品だ。咆哮するオーケストラにピアノが超絶技巧で挑み、激しい闘争を繰り広げたかと思えば、耽美と夢の世界に遊ぶ。滅多に聴けない曲だが、独奏の阪田知樹の強い要望で実現したというから、熱い演奏が期待できそう。 メインには1880年代にパリで起こった中木健二 ©塩澤秀樹 ビゼー/ホールマンの「カルメン・ファンタジー」ではチェロとピアノの丁々発止の音の対話が堪能でき、ベートーヴェンでは主題が幾重にも変容していく変奏曲の妙が楽しめる。ドヴォルザークの「孤独な私の魂に」は中木の自家薬籠中の作品。えもいわれぬ郷愁の念が阪田知樹 ©HIDEKI NAMAI交響曲創作の波の、美しい成果の一つであるショーソンの交響曲変ロ長調(1889-90)。郷愁を湛えて始まり、悲哀と喜びの間をさまよう。冒頭の儚いテーマは、フランス交響曲のお約束とも言うべき循環形式によって結尾で回想されるが、悲しみが高まったところで突如、輝かしい光が差し込み、深い安寧が訪れる。秋元孝介 ©Nikolaj Lund潜み、悲哀を込めた旋律に心が震える。ブラームスの「チェロとピアノのためのソナタ第2番」は晩年の円熟した作曲技法が堪能できる。チェロとピアノの多種多様な奏法がちりばめられ、両楽器から作曲家の想いが湧き上がってくるから。そのロマンを全身に纏いたい。文:江藤光紀文:伊熊よし子ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮) 東京都交響楽団12シーズンぶりに都響登場のマエストロが贈るフランス・プロ ヤン・パスカル・トルトゥリエが12シーズンぶりに都響の指揮台に帰ってくる。名チェリスト、ポールを父に持ち、BBCフィルやアイスランド響などで要職を歴任した大ベテランだ。今回は母国フランスの隠れ名曲てんこ盛りのプログラムで、シンフォニック音楽の醍醐味を堪能させてくれる。 まずはフォーレのパリ音楽院長時代の1913年に初演されたオペラ《ペネロープ》より前奏曲。そこはかとない哀愁を漂わせたフォーレの旋律と和声が、夫の帰還を待ちわびる主人公ペネロープの気分を描き出す。美しく切ない音楽だ。 続いてフローラン・シュミット「管弦楽とピアノのための協奏交響曲」(1928-31)。ドビュッシーとラヴェルの中間世代にあたる作曲家で、精緻な書法を持ち、エキゾティシズムや妖しさ、官能美を描かせたら右に出る人はいない。協奏交響曲はそんなシュミットの奇怪ぶ銀座ぶらっとコンサート #179 中木健二 “ロマンティックが止まらない 3”気鋭のピアニストとともに心に響く名曲を さまざまな音楽家と室内楽を演奏しているチェリストの中木健二が、葵トリオのピアニスト、秋元孝介と組んで「銀座ぶらっとコンサート」の“ロマンティックが止まらない 3”に登場。題して「ロマンス!!」。ビゼー、ベートーヴェン、ドヴォルザーク、ブラームスの作品で1700年製ヨーゼフ・グァルネリを存分に歌わせ、馨しく上質で豊かなロマンを表現する。 「私はいま、ベートーヴェンのフィルターを通して他の作曲家を見るというプログラム構成を考え、いろんな形で演奏しています」 こう語る中木は、今回のプログラムでもベートーヴェンの「魔笛の『恋を知る男たちは』の主題による7つの変奏曲」を選曲し、恋の歌から名曲までを組み合わせ、チェロとピアノで情熱的なデュオを聴かせる。ふたりは作品の裏側に潜むエピソードなどにも触れ、聴き手を名曲の内奥へといざなっていく。

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