eぶらあぼ 2023.2月号
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52Interview工藤重典(フルート)18世紀フルート黄金期の傑作を実力派の若手とともに 日本を代表するフルート奏者の工藤重典がプロデュースと独奏、指揮を兼ねる「東京チェンバー・ソロイスツ」の第1回演奏会(Vol.1)を2月14日、東京・四谷の紀尾井ホールで開く。 工藤がアンサンブル旗揚げの動機を語る。 「フルートが目覚ましく発達した18世紀から19世紀にかけてメルカダンテやチマローザ、シュターミッツなど、フルート協奏曲の傑作が数多く書かれました。19世紀のロマン派はフルートに関心がなかったようで、次の傑作登場は20世紀です。ピリオド(作曲当時の)楽器が台頭した時期、フルートが活躍するJ.S.バッハの『管弦楽組曲第2番』なども含め、私たちモダン(現代)楽器の奏者が18世紀の作品を吹く機会は激減しました。両者の融合も進んだ今、若い優秀なソリスト、森下幸路さんがコンサートマスターを務める室内合奏団とともに、私の恩師であるジャン=ピエール・ランパル先生はじめ、巨匠たちの時代に愛されたフルート協奏曲の数々を改めて聴いていただきたいと思い、プロデュースを手がけました」 工藤以外のフルート独奏者は第10回神戸国際フルートコンクール第3位の石井希衣、第88回日本音楽コンクーが友、シルヴェストロフに捧ぐ」と題されたツアーを行う。招聘元のMCSヤング・アーティスト主催のシリーズ「祈りが音楽になったのではない 音楽こそが祈りだったのだ」の第4弾にあたり、ブラームスとシルヴェストロフ、4月16日に東京で行われる会員限定コンサートではオール・ブラームス・プログラムが組まれている。今こそリュビモフ渾身のメッセージに耳を傾けたい。4/11(火)、4/17(月)各日19:00 五反田文化センター4/14(金)19:00 広島/はつかいち文化ホール ウッドワンさくらぴあ 他2/13(月)発売(東京公演のみ)問 MCSヤング・アーティスツ mticket@mcsya.org https://mcsya.orgル第1位の瀧本実里。「いま最も輝いている若手をそろえました。コンクールが数多く存在する中、真に実力のある若手を推すのは、指導や審査に携わっている私たち先輩世代の務めでもあります」。ヴィヴァルディ「フルートとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調」は工藤と森下、チマローザ「2本のフルートのための協奏曲」は石井と瀧本、モーツァルト「フルート協奏曲第1番」は工藤の吹き振りだ。冒頭のパッヘルベル「カノン」は「ジャン=フランソワ・パイヤール校訂版の楽譜をようやく手に入れ、パイヤール先生へのオマージュとして演奏する趣向です」。 日本は楽器の製造数世界一、愛好者人口もずば抜けて多い「フルート大国」だが、聴く側の数は東京文化会館大ホールを1人で満員にできたランパルの時代と比べ、むしろ減っている。「ランパルとオーレル・ニコレ、ジュリアス・ベイカーが東京にそろい、日本フルート協会25周年記念事業の『三大巨匠によるフルートの祭典』に臨み、サントリーホールを満員にした晩を覚えてい工藤重典プロデュース 東京チェンバー・ソロイスツ Vol.12/14(火)19:00 紀尾井ホール問 カジモト・イープラス050-3185-6728 https://www.kajimotomusic.comます」と語る工藤は「圧倒的に高い山が消え、裾野だけが広がった状態」を残念に思っている。「最新の演奏でフルート黄金時代の協奏曲を改めてお聴きいただき、うまくいったら毎年、東京チェンバー・ソロイスツの公演を続けていくつもりです」。取材・文:池田卓夫文:後藤菜穂子©Makoto Kamiyaアレクセイ・リュビモフ(ピアノ) 我が友、シルヴェストロフに捧ぐシルヴェストロフ作品の第一人者が紡ぐ祈りのプログラム ロシアのウクライナ侵攻後まもない昨年4月、ピアニストのアレクセイ・リュビモフのモスクワでのコンサート中に警官が突入する様子がSNSを駆け巡った。彼は冷静に演奏を続けたが、このコンサートで彼は親しい友人であるウクライナの作曲家シルヴェストロフと、シューベルトの作品を取り上げていた。 昨今、シルヴェストロフの深い祈りに満ちた音楽は、ウクライナへの連帯を示すべく世界中の音楽家によって演奏されているが、リュビモフは長年彼の作品を弾き、録音してきた最良の解釈者として知られる存在だ。 そのリュビモフが4月に来日し、「我

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