eぶらあぼ 2023.2月号
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 中学から吹奏楽に打ち込み、集大成として位置付けていた最後の全国大会。それが繭子の前から消えていった。悲しみや悔しさだけでなく、自分の欠場で音楽に穴が空くことが申し訳なかった。 繭子と同じファゴット担当で3年生の部長、高橋初実は名古屋への出発当日、抗原検査で無情にも陽性判定を受けた。「終わったな。全国大会のために頑張ってきたのに、いままでの努力は何だったんだろう……」44 コロナ禍も3年、ぶらあぼ編集部では多くの音楽家から吹奏楽部の苦難の状況を耳にしてきました。そこで吹奏楽と言えばこの方、吹奏楽作家のオザワ部長に登場いただき吹奏楽部を応援する企画を始めました。まだマスクが取れない日々ですが、音楽へひたむきな情熱を燃やす若者の姿は、見ている私たちも元気にしてくれます。 日本中の吹奏楽部員が憧れる全日本吹奏楽コンクール(全国大会)。その会場である愛知県の名古屋国際会議場センチュリーホールで2022年12月17日、「奇跡」のコンサートが開催された。 もともとそれは「悲運」から始まった。 昨年、秋田県の名門として知られる秋田県立秋田南高校吹奏楽部は通算32回目の全国大会出場が決まっていた。 ところが、10月23日の全国大会が間近になり、名古屋への出発まで1週間となったとき、部内に新型コロナウイルスの陽性者が出た。すると、翌日からさらに陽性者が増えていった。♪♪♪ 音楽面のリーダーである副指揮者を務めていたファゴット担当の3年生、清水繭子は早い段階で陽性判定となった。「まさか自分がかかるなんて……」 繭子は検査結果を知って愕然とした。発熱は39度台に達し、喉の痛みや咳に苦しめられた。取材・文・写真:オザワ部長(吹奏楽作家)高橋初実さんVol.6 秋田県立秋田南高等学校 吹奏楽部

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