eぶらあぼ 2023.2月号
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シベリウス:交響曲全集Ⅰ/パーヴォ・ヤルヴィ&パリ管ブラヴィッシモ/周防亮介バッハの錬金術 Vol.3 イギリス組曲(全曲) BWV806-811/武久源造P.ヤルヴィがパリ管の音楽監督時代に録音し、2018年に発売された、フランスのオーケストラ史上初のシベリウス交響曲全集からの分売。これは、パーヴォ自身が語る「私はシベリウスの演奏伝統など信じない。パリ管にはそうした伝統がないからこそ、作品をありのままに捉え、その深奥に偏見なく迫れる」の言葉通りの、既成概念を覆す快演だ。両曲ともに、耳新たなフレージングやバランスやテンポ変化に溢れた、豊麗で熱く深く雄弁な“交響音楽”が展開されており、“パリ管ならではのシベリウス”を存分に堪能させてくれる。2曲の組み合わせも初聴に最適。 (柴田克彦)亀井聖矢が、20歳の最後にリリースした1stフルアルバム。優勝したロン=ティボーはじめ2022年、世界のコンクールで披露し、高く評価された楽曲を収録。「ラ・カンパネラ」と「マゼッパ」は、余裕のタッチで奏される落ち着いた輝きを放つ音が心地よい。「『ノルマ』の回想」では、作品の濃密なドラマを若くみずみずしい音で熱く語り、「夜のガスパール」では、丁寧な音と起伏づくりの妙で、聴き手の耳を惹きつける。最後は彼の十八番である「イスラメイ」。技巧で圧倒する演奏になりがちなこの作品で、オリエンタルな香りやノスタルジックな感傷をしっかりと届ける。  (高坂はる香)21世紀のヴィルトゥオーゾとはこういう存在なのだろう。周防亮介による無伴奏ヴァイオリン作品集。意欲的な選曲はもちろんだが、演奏が真に驚異的。安心とスリルが矛盾せず同居するしなやかさ。さりとてアンビバレントというのも大仰に感じられるほど、力みなく自然な佇まい。テクニックはすでに世界最先端クラスで、迫力も痛快さも十分だが、あくまで作品の魅力を伝える一要素となる。一気呵成に弾かれがちな「魔王」で登場人物を明確に弾き分ける表現のすばらしさ。エルンストやパガニーニも歌が心に届く。若き俊才による無伴奏の味わいと懐深さに、次代への期待が膨らむ。(林 昌英)バッハを中心に40枚近くのCDを出している武久源造。この「イギリス組曲」にも、長年の蓄積とこだわりが満載。前半3曲をルッカース・モデルのチェンバロで、後半をバッハ時代のジルバーマン・モデルのフォルテピアノで演奏する。バッハが導入を書き込んだ曲以外の4曲で、武久が即興的な序奏を作曲して加える。大胆な試みだ。第1番では2つのクーラントの変奏に味があり、特にドゥーブルⅡは繊細で美しく、バッハの内面に分け入るかのよう。ブーレⅡの異様な音色変化にも驚かされる。第2番ジーグは対位法的展開に拡がりがあり、生命力に満ち満ちている。第5番アルマンドの内省的な歌や声部の絡みが美しい。(横原千史)J.S.バッハ:イギリス組曲第1番〜第6番武久源造(チェンバロ&フォルテピアノ)シベリウス:交響曲第2番、同第5番パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)パリ管弦楽団リスト:パガニーニによる大練習曲第3番「ラ・カンパネラ」、超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」、「ノルマ」の回想/ラヴェル:夜のガスパール/バラキレフ:東洋風幻想曲「イスラメイ」亀井聖矢(ピアノ)シュニトケ:ア・パガニーニ/クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース/エルンスト:シューベルトの「魔王」の主題によるグランド・カプリース/パガニーニ:パイジェッロの「うつろな心」の主題による序奏と変奏曲/タレガ(ルッジェーロ・リッチ編):アルハンブラの想い出 他周防亮介(ヴァイオリン)122収録:2015年3月、パリ(ライブ) 他ソニーミュージックSICC 19062 ¥2750(税込)イープラスミュージックem-0026 ¥3000(税込)オクタヴィア・レコードOVCL-00799 ¥3520(税込)コジマ録音ALCD-1214,1215(2枚組) ¥3740(税込)SACDCDSACDCDVIRTUOZO/亀井聖矢

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