eぶらあぼ 2023.1月号
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第966回 定期演奏会Aシリーズ 1/20(金)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp2/26(日)15:00 水戸芸術館コンサートホールATM問 水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000 https://www.arttowermito.or.jp60 今回の第1回は、「開花」。取り上げるのは、バッハ(ソナタ ニ長調 BWV963)、ベートーヴェン(選帝侯ソナタWoO47より第2番)、プロコフィエフ(ソナタ第1番)、ブラームス(ソナタ第3番)だ。いずれも、作曲家の若い時代に書かれたヨーン・ストルゴーズ ©Marco Borggreve 今回注目したいのはマデトヤ(1887~1947)の交響曲第2番。シベリウスに師事。パリ、ウィーン、ベルリンでも学び多様な作風を身につけた。作品にはフィンランド内戦で兄を失ったマデトヤの悲しみが反映されている。3つの交響曲の中でもっとも劇的で、重厚かつロマンティック。最初の2つの楽章は、ソナタだ。 それぞれの作曲家の原点であり、その個性を羽ばたかせた第一歩となる作品ばかり。そこには、のちに巨匠として知られる作曲家たちの、意欲にあふれた若々しい息吹も感じられるはずだ。ペッカ・クーシスト ©Maija Tammi不吉なクライマックス以外は、叙情的で牧歌的ですらある。第3楽章は、戦争を彷彿とさせる攻撃的な行進曲。終楽章は諦観に満ちている。 ストルゴーズは、ヘルシンキ・フィルとともにマデトヤの交響曲全集を完成させており、第一人者として自信に満ちた指揮で聴かせることだろう。文:鈴木淳史©Takehiro Gotoヨーン・ストルゴーズ(指揮) 東京都交響楽団同郷のマエストロ&ソリストで実現するオール・フィンランド・プログラム文:長谷川京介 フィンランド出身の二人、指揮者のヨーン・ストルゴーズと、ヴァイオリニスト、指揮者、作曲家でもあるペッカ・クーシストが都響定期に登場し、自国の作品、シベリウス「カレリア序曲」「ヴァイオリン協奏曲」とマデトヤ「交響曲第2番」を演奏する。 ストルゴーズは2008年から15年までヘルシンキ・フィルの首席指揮者を務め、2012年からBBCフィルの首席客演指揮者に就任した。18年読響に客演した際に聴いたが、スケールの大きいダイナミックかつ繊細な指揮で、弦をよく歌わせる点は、スウェーデン放送響のコンサートマスターだった経歴を感じさせた。クーシストは1995年、フィンランド人として初めてシベリウス国際ヴァイオリン・コンクールで優勝し、特別賞も授与された。同曲のCDは「力強く、情熱的な演奏。緊迫感と集中力に疑いの余地はない」とグラモフォン誌で絶賛された。小菅 優「ソナタ・プロジェクト」 Vol.1 開花偉大なる作曲家の原点を探求するシリーズが始動 小菅優ほどポジショニングの取り方がうまいピアニストはなかなかいない。楽譜から離れすぎることはもちろんないが、そこにべったりと付きすぎて視界が狭まることにもまったく無縁だ。クールなまでの客観的な視点から弾き始めたかと思えば、作品の本質に迫るべく、次第にその間合いを詰めてくることも。 そんな絶妙な立ち位置だからこそ、彼女の演奏から浮かび上がるのが、それぞれの作曲家や作品の個性だ。これまでのベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ全曲シリーズ」や、水・火・風・土の四元素に基づいた「Four Elements」シリーズなどの企画でも、小菅は各々の作品の個性を浮き彫りにしつつ、それらの音楽に共通する性格にも光をあててきた。 新しく始まる「ソナタ・プロジェクト」は、テーマごとにバロックから現代にいたる多彩なソナタ作品を組み合わせる。

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