eぶらあぼ 2023.1月号
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2/20(月)19:00 王子ホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677https://www.proarte.jp59プロデューサー in レジデンス 藤木大地&みなとみらいクインテット マチネ/ソワレ名手たちによる夢の競演プロジェクト 世界的カウンターテナーであり、横浜みなとみらいホールの「プロデューサー in レジデンス」初代プロデューサー2021-23を務める藤木大地のもとに、今もっとも活躍している名手たちが集結。昼と夜でそれぞれメンバーもプログラムも異なる室内楽を届ける「藤木大地&みなとみらいクインテット」。昼と夜で対になるような、絶妙なプログラミングはさすがである。 まず、どちらの公演にも藤木以外の5人によるピアノ五重奏が入っている(昼はシューマン、夜はドヴォルザークで、ともに第3楽章)。そして、美しく澄みわたる藤木の声で聴きたい歌曲の数々。昼はマーラー〈私はこの世に忘れられた〉、夜は女性の名を呼んで愛を歌うベートーヴェン〈アデライーデ〉とフォーレ〈リディア〉、さらにはユーモラスなプーランク〈美しき青春〉も。 あらゆる人に向けて開かれた場を目指す横浜みなとみらいホールらしく、親しみやすい名曲もたっぷり。昼はラフマニノフ〈ヴォカリーズ〉やモリコーネ〈ネッラ・ファンタジア〉に加え、松田聖子が歌った〈瑠璃色の地球〉まで! 夜はエディット・ピアフの代表曲〈愛の讃歌〉やアーレン〈オーバー・ザ・レインボー〉など。こういった楽曲を、クラシックの若手演奏家たちがどう表現するのかも楽しみだ。 さらには、日本の現役の作曲家たちによる歌曲が多数入っているのも藤木らし左より:藤木大地 ©平舘 平(マチネ&ソワレ)/成田達輝 ©Marco Borggreve/周防亮介 ©JUNICHIRO MATSUO/中木健二 ©ノザワヒロミチ/松本和将(以上マチネ)/川本嘉子 ©島崎陽子(マチネ&ソワレ)/長原幸太 ©読売日本交響楽団/辻 彩奈 ©Makoto Kamiya/辻本 玲/萩原麻未 ©Marco Borggreve(以上ソワレ)ポーランドの近現代にあて、シマノフスキで幕開け、新録で目覚ましい成果を実らせたショパンのマズルカとバツェヴィチのソナタ第2番を連ねる。後半は若き日からの十八番たる「ラプソディー・イン・ブルー」の自編版で結ぶが、その前に自作のバラード第1番、スウェーデン次代のマルティン・スカフテがドビュッシーにインスパイアされて書いた前奏曲も披露。他の誰にもできないことを、彼にしかできないピアノ演奏で聴かせるだろう。い。昼は藤木の盟友ともいえる加藤昌則の〈レモン哀歌〉(詩は高村光太郎『智恵子抄』より)、藤木にとっては合唱をやっていた中学時代から尊敬する存在だという木下牧子の〈鴎〉、藤木とはレコーディングや共演の機会も多い村松崇継の〈いのちの歌〉、夜は同じく村松の〈生命の奇跡〉や木下の〈夢みたものは〉を聴くことができる。藤木は以前「今、自分と同時代を生きている作曲家と演奏活動や創作活動を一緒にすることによって、僕自身とても勉強になっています。モーツァルトやシューベルトなど過去の作曲家の作品を理解しようとするとき、“これがも2/16(木)【マチネ】14:00 【ソワレ】19:00 横浜みなとみらいホール(小) 問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000https://yokohama-minatomiraihall.jp ※出演者、プログラム等の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。し今生まれたばかりの新曲だったら、僕の歌を聴いて作曲家はどう言ってくれるだろう?”という想像につながるから」と語っていた。そういう意味で今回のプログラムは、演奏家だけでなく、作曲家たちとの交流の賜物とも言えるだろう。 アーティストでありプロデューサーである藤木だからこそ成し得るこの貴重な企画は、ホールのネットワークを活かして全国各地でも予定されているとのこと(12/23福岡、2/18広島・三原、5/3新潟、5/21奈良・大和高田、8/6横須賀)。みなとみらいからの新たな発信に期待が膨らむ。©Anastasia Belina文:青澤隆明取材・文:原 典子ペーター・ヤブロンスキー ピアノ・リサイタル円熟期を迎えたピアニストが贈る一夜限りのステージ ペーター・ヤブロンスキーが元気だ。本人いわく、新しい人生を歩んでいる。50代に入る手前から、著しい進境を遂げ、レパートリーにも独自の視点を打ち出してきた。難曲に意欲を向けることで、自身の精神や演奏技巧をさらに高めてきた感もある。持ち前のリズム感は冴えたまま、内面的な静けさを醸し出すようにもなってきた。 数年ぶりの来日リサイタルは、ヤブロンスキーの現在を鮮やかに明かす大胆なプログラム。ポーランドとスウェーデンにルーツをもつ彼はまず

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