eぶらあぼ 2023.1月号
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第646回 定期演奏会〈トリフォニーホール・シリーズ〉ミュージカルオペラ(オペラ形式) 1/21(土)14:00 すみだトリフォニーホール〈サントリーホール・シリーズ〉演奏会形式 1/23(月)19:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp1/17(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp58彼の音楽の中にどう表現されているかが最も注目すべき点だ。タイトルに付けられた「ミュージカルオペラ」というちょっと不思議な造語について井上は、「ミュージカル公演で使われているマイクを歌手が使うから」だという。音楽に関しては、「これまで僕が影響を受かでもトランペット、ヴァイオリン、ピアノという珍しい編成の近藤譲「冬の間に」が特筆もの。「3つの楽器の音色が調和して、冬の森の中のような風景が広がる」と語る同曲の生演奏は貴重な聴きものとなる。なお、ヴァイオリンは札響の同僚・赤間さゆら、ピアノは公演全体で下田望が受け持つ。さらには、「ミュートの有無により遠近感が巧みに表現される」武満徹の「径(みち)」、「トランペット作品や吹奏楽曲を聴いて委嘱を望んだ」西村朗の新作、「特殊奏法と超絶技巧が要求される」ベリオの「セクエンツァⅩ」等、興味津々の演目が並ぶ。 明るく柔らかな音色で魅せる若きホープの勝負リサイタル、管楽器ファンならずとも要注目だ。井上道義 ©Yuriko Takagi工藤和真大西宇宙 ©Dario Acosta©Takuya Okamura文:片桐卓也文:柴田克彦小林沙羅 ©NIPPON COLUMBIAけたすべての作曲家、マーラーやショスタコーヴィチなどの音楽的要素がすべて詰まっていると言ってよいでしょう」とも語る。ともかく、この公演を体験しなければ、その本意は分からない。1月はすみだトリフォニーホールとサントリーホールに駆けつけよう。井上道義(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団出来たての音楽劇を自身のタクトで初演する 作曲家と指揮者が完全に分業してしまった今では、出来たての新作を作曲家自身の指揮で聴くというチャンスはほとんどない。しかし、2023年1月の新日本フィルハーモニー交響楽団「第646回定期演奏会」でそれが実現する。2024年で指揮からの引退を宣言している井上道義が、長く構想を温め、作曲に時間を費やした新作ミュージカルオペラ《A Way from Surrender~降福からの道~》op.4を自らのタクトで初演するのである。井上自身を反映した主人公の画家・タロー、そしてタローの両親のフィリピンでの戦争体験を描き、人生とは何か、愛とは何か、希望はどこに向かうのかを問う、一種自伝的な作品である。 画家タローに工藤和真、タローの父・正義に大西宇宙、その妻・みちこに小林沙羅など、実力ある若手歌手を起用したキャスティングも魅力的だが、やはりこの作品に込めた井上の想いが、東京オペラシティ B■■■■■■■→C 鶴田麻記(トランペット)花形楽器のホープが300年の時を超える 最近は金管楽器界でも若手女性奏者の活躍が際立っている。トランペットの鶴田麻記もその一人。1月の東京オペラシティ「B→C」の主役は彼女だ。1994年北海道生まれの鶴田は、東京藝術大学で学び、日本音楽コンクール第2位ほか数々の賞を受賞。2018年から札幌交響楽団の副首席奏者を務めている。 今回の「B=バッハ」は、ヴァイオリンを原曲とする協奏曲ニ長調と有名なコラールが3曲。協奏曲はピッコロ、コラールはD管のトランペットを用いるとのことなので、まずはその音色変化を楽しみたい。またピッコロトランペットを得意とする彼女は、ヘンデルのオーボエ協奏曲も同楽器で演奏。「高音域も無理なく輝かしい音色で吹ける」と語るこの楽器による2曲は、鶴田の特長を堪能できる大きな聴きどころだ。一方「C=コンテンポラリー」も、冒頭のカーゲル以下、巨匠の作品が並ぶ。な

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