eぶらあぼ 2023.1月号
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2/15(水)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227 https://stage.exhn.jp第531回日経ミューズサロン クリストフ・ジョヴァニネッティ(ヴァイオリン)+ 青柳いづみこ(ピアノ) 至福のデュオ・リサイタルマルセイユ音楽院で出会い共演を重ねてきた至高のデュオ パリ国立高等音楽院教授、そして演奏活動も積極的に行っているクリストフ・ジョヴァニネッティ(ヴァイオリン)と、文筆家としても活躍する青柳いづみこ(ピアノ)が日本で共演する。ふたりはマルセイユ音楽院で共に学んだ時代からの演奏仲間で、2009年にデュオを組んで以来、フランスと日本で共演を重ねてきた。今回の「第531回日経ミューズサロン」では、モーツァルト、シューベルト、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタの他、ショーソンの「詩曲」なども演奏予定。ジョヴァニネッティの演奏を聴い50Interviewアンティ・シーララ(ピアノ)作品の深遠な世界を表出する名手のピアニズム フィンランドが誇るピアノの名匠、アンティ・シーララが5年ぶりに来日し、ベートーヴェンの7番とシューマンの3番、2つの名ソナタを柱に据え、ハイドンとブラームスの佳品を配したリサイタルを開く。リーズ国際をはじめ、多くの登竜門を制し、常に世界の注目を集めてきた。「各々の作品と作曲家の世界、音楽の実在と本質をお届けしたい。これこそ、私が成すべきことだから」と語り、その真髄へと肉薄し続ける彼の“いま”を体感したい。 コロナ禍について「不満や失望はあったにせよ、(演奏活動の休止で)少しの安らぎの時間を得て、幾つかの課題に集中できる機会を得たのも確か」。かたや、ロシアのウクライナ侵攻に関しては「この出来事は、意外なほど身近に感じている。この世には常に、多くの苦しみと残酷さが存在します。残念ながら、これからも続くでしょう。人々がこうした感情に対処できるようにしてくれるものこそ、音楽だと信じている」と語る。 今回のプログラムは、すべての曲が“悲しみ”と“希望”、両方の要素を孕んでいるよう。シーララ自身は「作品に特定のメッセージを紐づけたくはない。解釈は常に多様であるべきだから」と前置きしつつ、「選んだ作品群は確かに悲劇的で、メランコリックな面があると同時に、それらと対照的な希望た巨匠メニューインが「人生における最もピュアな音楽的感銘を受けた」と語ったそうだが、アマデウス弦楽四重奏団の薫陶を受け、イザイ弦楽四重奏団、エリゼ弦楽四重奏団などで活動してきたジョヴァニネッティの豊かな演奏、そして『レコード芸術』特選盤に18枚もの録音が選ばれるなどの実力派・青柳の共演は、まさに成熟した大人の演奏の楽しさを教えてくれるに違いない。や喜び、さらにはユーモアを感じる瞬間も数多くある」という。 幕開けには、「悲劇的な瞬間すら、ユーモアや意外性が見出せる…多様な表現に、常に魅了される」というハイドンの「アンダンテと変奏曲」。続くベートーヴェンのソナタ第7番も、ハイドンと共鳴する。「ハイドンの悲しみの表現と、ベートーヴェンの第2楽章の並外れた激しさとの関連は、確かに念頭にあった。第2楽章の暗闇から抜け出し、フィナーレの即興的な明るさへと進む楽聖の姿には、驚くばかり」と吐露する。 さらに、彼が「敬愛してやまない」というブラームスの最後の作品「4つの小品」。「単純なものは何もない。後悔の中に優しさがあり、悲しみの中に安堵があり、作曲家の人生が終わりに近いことがこの音楽の中に表れているよう」。そして、締め括りに置いたシューマンのソナタ第3番は、スケルツォを置かない初版を選択した。 「バランス的には後の版の方が良いのでしょうが、この版は、若い作曲家の荒っぽく躁狂的な気質を反映し、不安定ながらも、駆り立てていく様に魅力を感じる」 ミュンヘン音大教授として、後進の指導にも力を注ぐシーララ。公演前日にアンティ・シーララ ピアノ・リサイタル 2/9(木)19:00 トッパンホール 12/19(月)発売問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp左:クリストフ・ジョヴァニネッティ 右:青柳いづみこは、マスタークラスで奥義を伝授する。新たなレパートリーについて「未開の扉の向こうには、演奏される機会を待つ、多くの作品を生み出した別の作曲家がいる」としつつも、「幅広さの向こうに、もうひとつの次元=深みがある!」と、従来のレパートリーを掘り下げる重要性を強調。「ベートーヴェンのソナタでさえ、何日も、何週間も、何年も、その中に沈み込んでしまうほどの無限の緻密さと美を与えてくれる…決して、飽くことはありません!」と力を込めた。 取材・文:寺西 肇文:片桐卓也©Tibor Bozi

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