eぶらあぼ 2023.1月号
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第357回 定期演奏会 1/28(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp2/4(土)、2/5(日)各日15:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 https://www.t-bunka.jp48東京文化会館 舞台芸術創造事業 デヴィッド・ラング《note to a friend》芥川龍之介作品を題材とした新作オペラの日本初演 「おちついてきけるんですよね。メロディがある。キッチュな音がでてこなくて、安心してきいていられる。アグレッシヴな現代(ゲンダイ)音楽(オンガク)ではない」 オペラ《note to a friend》演出の笈田ヨシは、作曲のデヴィッド・ラングの音楽の印象をこう語ってくれた。 歌い手=演戯者はひとり、小編成のアンサンブル、室内楽に適したホール。そうした空間のなか、死者という停止した時間にいるものの語りがつづく。テクストは芥川龍之介。作曲家じしんが選び、組みあわせた3つのテクストが、紡がれる。「デス・スピークス」や「マッチ売りの少女の受難曲」などを発表し、死は重要なテーマだし関心を持っているというラングは、こう語る―― 「音楽は音楽そのものがミステリー=神秘だ。音楽を感じることはできるが、なにものなのか完全に知ることはできない。わかりきらないものを表現するのに、音楽はひじょうにいいんじゃないか。わたしたちがどこへ行くのかという、こたえのない、難しい問いが、わたしの好きなテーマにかかわると言ったらいいのかもしれない」 現在の生活環境では、死があらわれるのは、情報としてばかり。身近な者いがいには遠ざけられ、希薄化される。高関 健 ©K.Miuraば、作曲家自身の半生をシンフォニックに描く異色の作品であるばかりでなく、コンサートマスターがソロを奏でる部分も多く、いわゆる“コンマス名曲”と呼ばれている。オーケストラの各パートにもかなりの名人芸を要求する芥川龍之介デヴィッド・ラング ©Peter Serling小林愛実 ©Makoto Nakagawa作品で、まさにオーケストラにとっては腕の見せどころとなる作品である。高関のもと、着実に実力を高めている東京シティ・フィルの「現在」を教えてくれる演奏となるだろう。新年早々、聴き逃せないコンサートだ。笈田ヨシ ©Sébastien Coindreでも、わたしたちは誰もが否応なく死すべきものとしてある。その不思議さを、芥川龍之介=デヴィッド・ラングは、笈田ヨシのつくる空間でたちあげる。 笈田ヨシはこうも言っていた―― 「いちばんみていて飽きないのは人間なんですよ、ぼくにとって」文:小沼純一高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団気鋭のソリストの情熱、オーケストラの実力を披露するドイツ名曲プロ文:片桐卓也 高関健のタクトのもと、ますます充実度を高めている東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団だが、2023年1月の東京オペラシティでの第357回定期演奏会には、第18回ショパン国際ピアノコンクール第4位入賞を果たした小林愛実が登場するので話題となっている。 小林が弾くのはベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。一連のベートーヴェンのピアノ協奏曲の中でも「ハ短調」を採用したこの協奏曲は、堅固な構成感のなかにベートーヴェンの熱い情熱を感じさせる作品として人気だが、ショパン作品で常に情熱溢れる演奏を展開している小林が、このベートーヴェンの傑作でどんな演奏を聴かせてくれるのか、多くの音楽ファンが注目している。 その協奏曲の前には同じくベートーヴェンの「献堂式」序曲、そして後半にはR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」が置かれた。「英雄の生涯」といえ

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