eぶらあぼ 2023.1月号
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第747回 東京定期演奏会〈秋季〉 1/20(金)19:00、1/21(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://japanphil.or.jp1/19(木)18:30 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 https://www.yokosuka-arts.or.jp47〜亡き恩師 野島 稔氏に捧ぐ〜 藤田真央 ピアノ・リサイタル恩師ゆかりの地「よこすか」で奏でるカーネギー・デビュープログラム文:飯田有抄 藤田真央が恩師と慕うピアニスト野島稔が、2022年5月にがんのため他界した。76歳だった。東京音楽大学学長であった野島のレッスンを、藤田は17歳から受けていた。「雲の上の存在」と語る恩師と藤田は、長年にわたりさまざまな対話も交わしてきた。音楽家として、人として、多くの学びを授けてくれた野島に深い感謝を込めて、藤田は野島の出身地である横須賀市のよこすか芸術劇場にて、急遽リサイタルを行うことにした。 この公演には、一つの「報告」も兼ねているという。野島が1970年にデビューしたニューヨークのカーネギーホールにて、いよいよ藤田もリサイタルを行うことになったのだ。この横須賀公演は、カーネギー・デビューのわずか6日前というタイミングになるが、藤田はまったく同一のプログラムを恩師に捧げて演奏する。 モーツァルトは「9つの変奏曲」K.573 後半は東欧の民謡の研究に情熱を傾けたバルトーク最晩年の代表作「管弦楽のための協奏曲」。リズムの工夫やトレードマークとも言うべき夜想的な楽章も併せもち、聴きどころ満載、またオーケストラの各奏者に名人芸を求める難曲でもある。失われていくフォークの精神のダイナミズムを、コスモポリタニスト、カーチュンはどう表現するのだろうか。 なお、カーチュンは他にも「アランフェス協奏曲」(ギター:村治佳織)とベートーヴェン「英雄」(1/14さいたまおよびソナタ第9番ニ長調を取り上げる。リストのバラード第2番ロ短調、ブラームスの「主題と変奏」op.18b(名曲、弦楽六重奏第1番第2楽章のピアノ版)という陰影の深い作品を経て、クララ・シューマンの「3つのロマンス」op.21およびロベルト・シューマンのソナタ第2番を弾く。 「君のリサイタルを聴きたい」—恩師が電話で伝えた最後の言葉を胸に、藤田はどのような音色を響かせるのだろうか。終演後には、22年の「野島稔・よこすかピアノコンクール」で審査委員長代行を務めた梅津時比古と藤田のトークも行われる。文:江藤光紀©Angie Kremer定期、1/15名曲コンサート)、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番(独奏:小菅優)と交響曲第2番(1/28横浜定期、1/29芸劇シリーズ)の2つのプログラムを振る。©Dovile Sermokasカーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団次期首席指揮者が描く民族音楽に魅せられた作曲家たち 数年前、初めてカーチュン・ウォンの指揮に接し、リズム感、フレッシュな音運びに感心したが、その後すぐに日本フィルの首席客演指揮者に任ぜられ、2022年5月には来秋からの首席指揮者就任も発表された。出世街道を駆けのぼったのである。 シンガポール出身の36歳。中国・インド・マレー・西洋と、様々な文化の混在する環境で育ったカーチュンが興味を持った作曲家が、西洋的なるものに日本の魂を込めようとした早坂文雄、伊福部昭や芥川也寸志あたりだったというのが面白い。 伊福部作品については22年5月の日本フィル定期の「リトミカ・オスティナータ」のパワフルな演奏が話題を呼んだが、早くも第2弾がお目見えする。代表作「シンフォニア・タプカーラ」だ。タプカーラはアイヌ語で“足を踏みしめる舞”を意味し、まさに民族共生を地でいくような作品である。

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