eぶらあぼ 2023.1月号
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46Interviewジョン・オズボーン(テノール)世界を魅了するロッシーニテノールで聴く《オテッロ》 第5回 ベルカントオペラフェスティバル イン ジャパン(藤原歌劇団×ヴァッレ・ディトリア音楽祭 提携公演)が2023年1月に開催される。魅力的なコンサートも多いが、今回の大注目はロッシーニの《オテッロ》上演だ。近年では悲劇的な内容を持つオペラ・セリアの人気が高まっているロッシーニだが、日本での鑑賞の機会はまだまだ限られる。高度な歌唱技術を持った歌手たちを必要とするのが上演の難しさの原因だが、現在ではロッシーニのセリアを歌うことのできる歌手たちが増えている。今回《オテッロ》のキャストは世界でひっぱりだこのベルカント歌手たちが集結しており、その中でも題名役のオテッロを歌うジョン・オズボーンは、この役を一流歌劇場で数多く歌い、映像も複数存在するなど第一人者だ。オズボーンにこの役について語ってもらった。 「オテッロ役は演劇の歴史の中でも、もっとも虐げられ、ひどく苦しめられたキャラクターの一つです。“アフリカ出身のムーア人”は、偏見と人種差別の犠牲になり続け、常に正しい行いをし、信じられないような戦士となり英雄と呼ばれて、それでもなおデズデーモナの愛に値せず、彼女の家族に受け入れられるべきではない人間とみなされています」。そして密かに結婚しているデズデーモナが自分を裏切ったと信じたオテッロは「嫉妬と怒りで正気を失います。それが彼を、オペラや演劇で描かれた中で、もっとも魅力的でエモーショナルな役にしているのです」。 ロッシーニの音楽において、「テノールの声にとっての極端な高音や低音、歌手にとっては過酷な細かい装飾歌唱、優美な対比の表現、これらはロッシーニのオペラでは典型的ですが、その中でもオテッロはもっともチャレンジングな役なのです」。彼がオテッロ役に必要な柔軟さとスタミナをあわせ持っているのは「長年、ロッシーニの音楽を歌ってきて、彼の偉大なる音楽のスペシャリストだと自負しています」という経験のおかげだ。 オズボーンはアメリカ人だが、イタリア語やフランス語の歌における言葉の扱いが群を抜いている。「昔から、アート・フォームとしての言語とコミュニケーションには常に魅了されています」とのことで、さまざまな言語が、さまざまな作曲技法と結びつくことにより「言葉と音楽を使って詩を表現することは、常にとても面白く多彩な結果をもたらす」のだという。 ベルカント・オペラについては、歌う役を「優美な役柄、英雄的な役柄、などと分類することもありますが、自分は区別して考えていません。呼吸の支えのバランスとコントロールを保ち、フレージングを弧を描くように作る。楽譜に指定があるとき以外は、常にレガートで歌います。 エレガントかつ洗練された方法で歌うための柔軟性を身につけるには、長年の実践と経験が必要です。私は歌手人生のすべてを、これらの声のベルカントオペラフェスティバル イン ジャパン2022ロッシーニ作曲 オペラ《オテッロ》ニュープロダクション(全3幕、字幕付き原語〈イタリア語〉上演)1/20(金)、1/22(日)各日14:00 テアトロ・ジーリオ・ショウワ問 日本オペラ振興会チケットセンター03-6721-0874 https://www.jof.or.jp※配役など公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。新型コロナウイルスの影響で、公演やイベントが延期・中止になる場合があります。掲載している公演の最新情報は、それぞれの主催者のホームページなどでご確認ください。取材・文:井内美香技術の習得、さまざまな言語で歌うときの言葉の抑揚、そして美しく表現力豊かな歌唱のために捧げてきたのです」と語る。 日本には2014年にフランス国立リヨン歌劇場と来日して《ホフマン物語》に主演して以来。 「ベルカント界の素晴らしい歌手たちと一緒に来日して、ロッシーニの偉大な作品を歌います。声楽の超絶技巧、そして波乱に満ちたドラマが味わえる《オテッロ》を楽しみにしていてください」©Matilde Fasso

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