Informationやまぎん県民ホールシリーズVol.5オペラ指揮者 阪哲朗が誘う “演奏会形式オペラシリーズ” Vol.1 《ラ・ボエーム》2/26(日)15:00 やまぎん県民ホール■ 山響チケットサービス023-616-6607https://www.yamakyo.or.jpTetsuro Ban/常任指揮者 1月公演の前半は、辻彩奈のヴァイオリン・ソロでヴィヴァルディ「四季」。辻は最近のアルゲリッチとの共演でも劣らぬ存在感をみせるなど、いま絶好調の俊才。彼女の「四季」というだけでも聴きものだが、阪が指揮ではなく「チェンバロ」とだけクレジットされているのも逆に注目を集める。 辻は山響にすでに2回出演し、共演した阪も「辻さんは初共演の最初のフレーズからもうすばらしかった。指揮者は要らないくらいに自然な音楽」と惚れ込んでいる。同時に「山響のサイズであれば、アンサンブルに強くなければ存在感が出ません」とも語り、ヴィヴァルディは山響にとっても恰好の演目であるという。「指揮者が言うことをきかせるのではなく、楽員とディスカッションしながら共に作りあげていく」という彼らの成果が示される場にもなりそうだ。 2月は演奏会形式のプッチーニのオペラ《ラ・ボエーム》。「山形をオペラ文化都市に」という「やまがたオペラフェスティバル」公演のひとつ(1月には二期会《フィガロの結婚》が阪と山響の演奏で上演される)。両親が山形出身である阪の意気込みは熱い。「山形発信のオペラはライフワーク。合唱はもともと盛んな地域ですし、オペラも根付かせていきたい。普段オペラに接する機会がない方も、構える必要はありません。オペラは物語なので演劇やミュージカルに近いし、観ながら笑ったっていいんです。 今回はすばらしい歌手陣がそろいましたし、合唱も入れられます。実は22年3月に《ボエーム》抜粋を久慈市で上演したのですが、そのときは合唱の出るシーンをすべてカットせざるを得ませんでした。やっと《ボエーム》“全曲”ができます! 合唱はオール山形で、児童合唱も地元の高校生たちで。観るだけじゃなくて“出演したよ!”という人が少しずつ増えていけば、ホールに通う人も増えていくでしょう」 オペラシリーズの初回に《ラ・ボエーム》を選んだ理由を問うと「好きなんですよ!」と笑う。さらに、コーミッシェ・オーパー専属指揮者やレーゲンスブルク歌劇場音楽総監督時代など、節目で何度も関わってきた演目でもあるという。「コーミッシェ・オーパー採用試験がこの演目だったし、なにか問題があって演目が変わるときは座付きの歌手でまかなえる《ボエーム》になる。ウィーンで初めて勉強した演目も、日本で1996年に初めて振ったオペラも《ボエーム》です。これまでかなりの回数振ってきましたが、やっぱりいいオペラです。お金がなくても画家や詩人、音楽家、哲学者になりたいという夢だけはあって、みんな未完の状態。大人だったらこうすればいいとわかることも、若さゆえにわからない、思いつかないということに共感できるし、“青春ってこうだった”と感動できる。お腹はすいていても夢を語らせたら一晩中とか、若いからできたこと、できなかったことがある、そういう魅力が伝わればうれしいです」 山響の新たな挑戦であると同時に、阪の指揮でプッチーニを堪能できる待望のチャンス。全国の注目を集める公演となる。 ©Kazuhiko SuzukiInterview44「楽員と共につくりあげていく」長きにわたるドイツでの経験を、山形の地に注ぎ込む阪 哲朗
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