eぶらあぼ 2023.1月号
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43Informationやまぎん県民ホールシリーズVol.490歳を迎える巨匠 “村川千秋のシベリウス” 1/15(日)15:00 やまぎん県民ホール■ 山響チケットサービス023-616-6607https://www.yamakyo.or.jpChiaki Murakawa/創立名誉指揮者 山響が創立されたのは1972年。創立名誉指揮者・村川千秋の尽力によるものだった。そこから半世紀を迎えた山響に、90歳の卒寿を迎える村川が登壇する。 村川は山形で生まれ育ち、東京藝術大学、インディアナ大学大学院で学び、その後山形に拠点を戻した。半世紀前に東北初のプロ楽団として山響を創立し、それを維持したこと。かなりの困難もあったはずで、その偉業は称賛され続けるだろう。「終戦後にやっと音楽らしい音楽に触れられて、高校のときに初めて本格的なオーケストラを聴いて本当に感激しました。指揮者になろうと決意して藝大に入りましたが、東京のレベルの高さは衝撃的で、同学年の岩城宏之君、山本直純君とか、もう全然違う。ヨーロッパには田舎にもオケがあるのに、日本は東京にしかないことも格差につながっていると感じ、山形にオケを作ろうと使命感をもちました。日本中に芸術音楽というものを定着させるという夢に、この50年で少しは近づけていればと思います」 その夢のために、県内各地の学校で演奏する「スクールコンサート」を始めたことは特筆される。「こどもたちに音楽を届けたい」という理念で、現在までなんと延べ300万人のこどもたちが山響の演奏を体験してきたのである。そこには教育への強い問題意識があった。「日本では音楽の勉強といっても、教えるのは作曲家の顔ばかりで、音楽自体は聴けていない。音楽そのものをできるだけ早く体験してもらいたい。高校生はせっかく体験して吸収しても、受験や仕事に入ると芸術から離れてしまう。では中学生、いや小学生とやってきて、いまは赤ちゃんに聴かせる活動をしています。とにかく、子どもに体験させ続けて好きな人を育てていけば、どんな地方でもオケが成り立つ可能性があります。ぜひ山響がやってきたことを他県でもやってもらいたい。音楽の図書館にあたるものはレコードではなく、やはり人間がやる生の音楽なんです」 村川自身の卒寿を祝う公演のために選んだ作品は、演奏機会の多くないシベリウスの交響曲第3番。「日本にフィンランド音楽を紹介した渡邉暁雄先生に藝大で教わり、シベリウスに深く触れていくうちに、東北という北国に住む私たちにとってわかりやすい音楽なのではと考え始めました。その思いで山響ではシベリウスを7年かけて1曲ずつ紹介してきました。 シベリウスのシンフォニーは7曲すべて名曲です。そのうち3番は独特で、風景や歴史とかとあまり関係なくて、音階と和音だけでできている。モーツァルトと同じような意味で、シンプルな素材を組み合わせるだけであれだけ素晴らしい音楽ができあがる。音だけの音楽とでもいうべきか、とにかく個性的です。この貴重な機会に一番好きな曲をやらせていただくことにしました」 山形に来てみると、その空気感が第3番のイメージに合うと肌で感じられる。これを山響創立者として記念の回のメッセージに選んだマエストロの深き思い、しっかり受けとめたい。Interview「山形にオーケストラを!」山響の原点を創ったマエストロのシベリウス村川千秋

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