eぶらあぼ 2023.1月号
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取材・文:林 昌英 いま山形交響楽団がおもしろい。2019年に阪哲朗が常任指揮者に就任して以来、音楽の喜びを具現化したような阪の指揮ぶりと、山響がこれまで培ってきた音色が絶妙な融合をみせて、日本中のどの楽団とも違う演奏が実現し始めている。 もちろん、19年まで飯森範親が音楽監督を務めた期間にも、演奏水準の向上と興味深いプログラミングを実現して、山形のみならず全国の音楽ファンの注目を集めていた。そうやって飯森が積み重ねてきたものが土台となり、阪のもとでさらなる段階に入っているのを実感できるのである。 山形市の町をあげたバックアップも特筆すべきもの。山形駅から市街地を歩くと、町のあちこちで山響の写真などが見つかるはずだ。特に山形市役所のウインドウには山形交響楽団のコーナーがあり、楽員全員の写真が一人ずつ掲示されていることに驚かされる。集客もいまや9割近い動員を実現しているとのことで、名実ともに山響ほど「地元に愛されるオーケストラ」を体現している楽団もそう多くはないだろう。 そんな山響のオリジナリティをよく示す「特別演奏会」が年明けの23年1月と2月に開催される。1月は阪がチェンバロを弾くヴィヴァルディ「四季」(ヴァイオリン:辻彩奈)と創立名誉指揮者の村川千秋によるシベリウスという、意義深くもユニークなコンサート。2月は阪と山響の「演奏会形式オペラシリーズ」の第1回として、プッチーニのオペラ《ラ・ボエーム》が披露される。それぞれのコンサートについて、村川と阪に語ってもらった。42©Kazuhiko Suzuki第2弾!創立50周年!躍進めざましい山形交響楽団現地レポート

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