eぶらあぼ 2023.1月号
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N&FMF26701 ¥3000(税込)SACDCDCDCD130『レコード芸術』で特選を獲得したジュリアーニ作品集に次ぐ荒井一穂の2ndアルバムは、カステルヌオーヴォ=テデスコ、ポンセ、ホセのソナタ―いずれも難曲として知られる―を並べるという実に挑戦的なものだが、その出来栄えは全く瞠目に値する。技術的な意味で一分の隙もないであろうことは予め想像がついたが、称賛すべきはキャラクターの異なるそれぞれの作品の性格を実に鮮明に表現し得ている点だ。カステルヌオーヴォ=テデスコの近代的な書法による響きの斬新さ、より伝統的で抒情的なポンセの親密な表現、そしてホセにおける「仕組まれた粗野」さ。ギターファンのみならず必聴!(藤原 聡)「最初の1音を奏した時に、最後の1音が頭になくてはならぬ」と語ったのは、チェリビダッケだったろうか。牧野縝(さおり)のベートーヴェンとブラームスを耳にした時、この言葉がふと脳裏をよぎった。ドイツで12年間を過ごし、数々の登竜門で実績を重ねて、マンハイム国立音大などで教鞭も執ったピアノの名匠。その確固たる構築感の中にも、魅惑的な揺らぎがある。そして、厳しさの向こうに優しさが、繊細さのうちにも大胆さが存在する。絶妙なるバランス感覚と絶対の安定性。強奏のコードも、決して音を潰すようなことはない。聴き手はただ身を委ねるだけで、至高の愉悦を得られよう。(寺西 肇)録音の少ないヴァイオリン作品や、学習者にとって有用な練習曲などを収録したアルバム制作に力を入れる島根恵。「ヴァイオリン・ヴィルトゥオーゾの世界」と題したCD第2弾は、前作に続きピアノは名手・碓井俊樹。F.ザイツの「ハンガリー狂詩曲」や、学習者のために作曲された「学生協奏曲」第2番・第5番は、ドラマティックかつ端正に描く。これらは島根自身が校訂・解説を手がけた楽譜も音楽之友社より出版されている。サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番はピアノ伴奏版で聴くことで、音楽の機微が鮮やかに浮かび上がり、こちらも学習者の良き手本となるだろう。(飯田有抄)近野賢一の若い声は、柔らかな甘い響きで、ドイツ語のディクションもよく聴きやすく、とても魅力的だ。近野の師匠でもある大ベテラン岡原慎也のピアノは美しく、的確な表現でサポートし、しかもシューベルト晩年の音楽の奥行きを随所で知らしめてくれる。「あふれる涙」から「川の上で」にかけての雄大なメロディは、実に味がある。「鬼火」も不思議な感覚を焙り出す。「休息」の最後の2行が独特の表現でうごめく。「春の夢」には、夢の甘さ、醒めた残酷、それでも夢みたいという小ドラマがある。「霜おく髪」のピアノの表情が繊細で美しい。そして「辻音楽師」の虚無的な寂しさ。見事な演奏だ。(横原千史)カステルヌオーヴォ=テデスコ:ソナタ ニ長調「ボッケリーニを讃えて」/ポンセ:ソナタ・ロマンティカ「シューベルトを讃えて」/ホセ:ソナタ荒井一穂(ギター)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第28番/ブラームス:4つのピアノ小品、創作主題による変奏曲牧野縝(ピアノ)シューベルト:冬の旅近野賢一(バリトン)岡原慎也(ピアノ)オクタヴィア・レコードOVCL-00794 ¥3520(税込)日本アコースティックレコーズNARC-2180 ¥2750(税込)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第28番、ブラームス:4つのピアノ小品 他/牧野ハンガリー狂詩曲 ヴァイオリン・ヴィルトゥオーゾの世界 Vol.2:ザイツ&サン=サーンス/島根恵ザイツ:ハンガリー狂詩曲、学生協奏曲第2番、同第5番/サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番、序奏とロンド・カプリッチオーソ/ビゼー(島根恵編):歌劇《カルメン》第1幕より 手紙の二重唱〈母のたよりを〉/島根恵:私が尊敬する人々島根恵(ヴァイオリン) 碓井俊樹(ピアノ) 島根朋史(チェロ)コジマ録音ALCD-9244 ¥3080(税込)シューベルト:冬の旅/近野賢一20世紀のギターソナタ集/荒井一穂

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