eぶらあぼ 2023.1月号
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SACD+DVDCDCDCD128指揮界の重鎮・秋山和慶が、ミュージックアドバイザーを務める日本センチュリー響を振った、十八番作品のライブ録音。マエストロ80歳時における、円熟味が滲み出たブラームスの1番だ。堂々たる冒頭楽章から、瑞々しい緩徐楽章を経て、的確な起伏の果てに格調をもって高揚を遂げる終楽章に至る流れは、正攻法の巨匠の面目躍如。堅牢にして丁寧な造型、端正かつ重厚でバランスの良い響きなど、全体に申し分ない出来栄えだ。オーケストラも第2楽章の潤いのある弦楽器陣をはじめ、終始充実したパフォーマンスを展開。アンコールのシューベルトも実に味わい深い。 (柴田克彦)谷昂登は音楽的なニュアンスやエネルギーを敏感に捉え、繊細に表現できるピアニストだ。若くしてどこか老成した音楽、ときに官能的な響きをも奏でる谷は、2021年に日本音楽コンクールで優勝を飾る以前から、音楽関係者の間で熱い期待を寄せられてきた。今回、そんな谷の録音が高崎芸術劇場T-Shotシリーズ第7弾CDとしてリリースされる。得意のスクリャービン、シューマンの幻想曲、大曲のリストのソナタなどを収録。濃密ながらどこまでも美しい、谷の冴えわたるタッチをぜひ堪能してほしい。初回限定DVDはチャイコフスキーの「秋の歌」や特典映像を収録。 (飯田有抄)天から降る“何か”を受け止め、音へと紡ぎ換えてゆくよう。大阪交響楽団首席ソロ・コンマスを務める一方、ソリストとしても活躍する森下幸路の最新録音は、「春」がテーマ。ベートーヴェンとドビュッシー、外山雄三のソナタを軸に、陽光を感じさせる小品を配した。透明感に満ちた美音と、時折交える上品なポルタメント。数多い共演で気心の知れたピアノの川畑陽子とのデュオは、もはや“一体の楽器”かのごとき連携の良さ。外山は、33歳で書いた自作の快演に「この曲を完成させてくれた」と賛辞を寄せる。「世界の“春”が待ち遠しい」と綴る森下。当盤には「希望」も詰まっている。(笹田和人)フランス音楽のスペシャリストであり、優れた教育者でもある秦はるひ。彼女を中心に12名のピアニスト達がカール・チェルニーの「12の前奏曲とフーガ」を世界初録音。“練習曲”のイメージが先行する作曲家だが、彼が遺した作品は1000曲以上と膨大であり、メカニックだけではない様々な魅力に富んでいる。今回の曲はまさにそうしたものの一つだ。リストもかくやと思われるほどの超絶技巧が駆使されつつ、各声部の充実した対話が繰り広げられる作品群である。演奏者の技量はもちろん、使用されたファツィオリF308という多彩な音色をもつピアノも、作品の魅力を存分に届けるのに貢献している。(長井進之介)ブラームス:交響曲第1番 他/秋山和慶&日本センチュリー響ブラームス:交響曲第1番シューベルト:劇音楽「ロザムンデ」より〈間奏曲第3番〉秋山和慶(指揮)日本センチュリー交響楽団高崎芸術劇場 大友直人Presents T-Shotシリーズ vol.7 谷昂登 IN CONCERTチェルニー:12の前奏曲とフーガ/アトリエ・アッシュスクリャービン:幻想曲 ロ短調/シューマン:幻想曲 ハ長調/クライスラー(ラフマニノフ編):愛の悲しみ/リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 他谷昂登(ピアノ)ベートーヴェン:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第5番「春」/フォーレ:5月/ドビュッシー:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ/外山雄三:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ/ラフマニノフ(クライスラー編):ピアノ協奏曲第2番より「祈り」/クライスラー:美しきロスマリン 他森下幸路(ヴァイオリン)川畑陽子(ピアノ)ナミ・レコードWWCC-7977 ¥2750(税込)チェルニー:12の前奏曲とフーガ op.400秦はるひ 伊藤順一 黒岩航紀 小菅綾 小林えりか 齊藤一也 増田達斗 高橋ドレミ 中平優香 中田雄一朗 鈴木隆太郎 小山田桃(以上ピアノ)収録:2021年7月、びわ湖ホール(ライブ)マイスター・ミュージックMM-4512 ¥3300(税込)オクタヴィア・レコードOVCX-00093 ¥3630(税込)アールアンフィニMECO-1076 ¥3300(税込)SPRING/森下幸路&川畑陽子

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