eぶらあぼ 2022.12月号
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第33回国際古楽コンクール〈山梨〉鍵盤楽器部門第1位受賞記念加藤美季 フォルテピアノ・リサイタル 〜イギリス式ピアノに魅せられて〜ベートーヴェンを魅了したピアノで光り出す古典派のピアノ曲 モーツァルトやベートーヴェンが生きていた18世紀末から19世紀初頭、彼らが使っていた〈ピアノ〉は現代のグランドピアノではなく、様々な工房が作っていた〈フォルテピアノ〉だった。フォルテピアノの響きはそれぞれに個性的。どの楽器を選び、どの作曲家の作品を演奏するか、というピアニストたちの判断によって、コンサートは千変万化する。 第33回国際古楽コンクール〈山梨〉の鍵盤楽器部門でフォルテピアノ奏者としては初の第1位を獲得した加藤美季が、ヤマハホールで〈イギリス式ピアノ〉を使ってリサイタルを開催する。加藤は東京藝術大学楽理科、同大学院古楽科フォルテピアノ専攻を修了。小倉貴久子、大塚直哉などに師事し、アウトリーチなどでも積極的に活動している。 今回使われるのは「ジョン・ブロードウッド・アンド・サンズ」というイギリスのピアノ・メーカーによる1800年頃の作(2020年 太田垣至修復)。ブロードウッド社といえば、1818年にベートーヴェンに6オクターヴの鍵盤を持つピアノが届けられ、亡くなるまで側にあったことで知られる。晩年の様々なピアノ曲の傑作は、ブロードウッドによって生み出されたものとも言える。 このコンサートではベートーヴェン「ヴァルトシュタイン」ソナタに加え、同時代のクレメンティ「クラヴィーア・ソナタ ロ短調」などが演奏される。クレメンティ作品は現代ではあまり演奏されないが、モーツァルトやベートーヴェンと同じくらい人気のあった作曲家で、その作品を当時のフォルテピアノの響きで聴くというのは貴重な体験となる。作品の魅力を再認識させたい、という加藤の意気込みに期待したい。12/14(水)19:00 紀尾井ホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp12/28(水)19:00 ヤマハホール問 1002(イチマルマルニ)03-3264-0244 https://www.1002.co.jp73左より:山形由美、常磐津文字兵衛、菅野 潤 ©岡本卓也津文字兵衛作曲の詩曲「コヒノオモニ」(初演)は、タイトルからして興味津々、果たしてどんな作品だろう。聴いてのお楽しみとしたい。文:長谷川京介文:片桐卓也The Trio 〜ヨーロッパと江戸の融合〜 2022和洋異色トリオの独創的な音色を味わう フルート、ピアノ、中棹三味線という(改訂版日本初演)ユニークなアンサンブル「The Trio」誕は、和と洋の見事な生には縁と偶然が重なった。最初は、調和と、三味線の擬フルートの山形由美が藝大時代の同級音(ある音に似せて生、五世常磐津文字兵衛の中棹三味線作り出す音)が新鮮による洋楽的な演奏に興味を持ち、共だった。演をもちかけたことに始まる。一方で、 今回の公演では、常磐津はある文化サロンでピアノの菅大政直人の「三つの野潤と親しくなる。菅野は同じ事務所恋歌 ─フルート、三の山形のCDやツアーに、ピアニストと味線、ピアノのためして以前から参加していた。ある時、3の─」(委嘱・初演)人は偶然その文化サロンで出会い、不が予定されている。思議な縁にすっかり意気投合した。フThe Trioならではのルートと三味線はどちらもメロディー独創的な音楽を楽し楽器、和音を奏でるピアノが加われば、めるだろう。ヴォーアンサンブルができる。早速菅野に提ン・ウィリアムズのバレエ組曲は山形由案し、The Trioの結成となった。美デビュー30周年記念CDにも収録さ The Trioは、2019年にバルセロナ、れている4曲からなる夢想的な作品。ピアノは菅野潤が受け持つ。五世常磐パリ、ザルツブルクで公演し、大好評を博した。21年トッパンホールで聴いた、The Trio委嘱の松波匠太郎の「トリオ ─フルート、三味線、ピアノのための─」

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