eぶらあぼ 2022.12月号
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1台のピアノに12人のピアニストという、稀有な経験も楽しかった」と音楽プロデューサーでアールアンフィニ・レーベル代表の武藤敏樹。「ファツィオリの多彩な音色のお陰で、また新たな魅力も発見しました」と言う秦を中心とした、鎌倉殿ならぬ“チェルニー殿の12人”。来春には発売記念のコンサートも予定されている。12/24(土)、12/25(日)各日 第一部 16:30 第二部 19:00 日経ホール問 奏楽会事務局03-4570-6731 https://www.ninorotaopera.com64Interview秦 はるひ(ピアノ、アトリエ・アッシュ主宰)アトリエ・アッシュ発、世界初録音となるチェルニーの前奏曲とフーガ取材・文:上田弘子 かつてのヨーロッパでは、芸術、文学、哲学などなど各界のオーソリティや新進気鋭の顔ぶれがサロンに集まっては議論の花を咲かせていた。互いに刺激し合い高め合い、そこから新たなムーブメントも起きていた。そのようなサロンを、ピアニストの秦はるひと音楽学者の上田泰史が共同主宰している。「アトリエ・アッシュ・アートサロン」は設立から2年半だが、毎回テーマを設けたレクチャーや試演会など年2回の公演は、貴重な内容ばかりである。そしてこの12月、練習曲で有名なチェルニーの「12の前奏曲とフーガ 作品400」がアトリエ・アッシュ・アートサロン第1弾CDとしてリリースされる。 「これは上田泰史さんの著書『「チェルニー30番」の秘密 ~練習曲は進化する』の中から見つけた作品で、サロンの第1回と第2回で試演会を行いました。そして音楽的に充実した作品ということがわかったので、ぜひ音に残そうということになりました。あのチェルニーですから本当に難曲ですが、弾けば弾くほどチェルニーがピアノという楽器をどれほど熟知していたか、そして表現の可能性を追究し続けていたかを実感しました。奏法の習得においても作品の魅力においても、様々な要素が凝縮された圧巻の12曲です」 確かに聴いていると音符で埋め尽くて音楽的に充足している。 実はロータはロッシーニからプッチーニにまで精通した「イタオペ」の正統的継承者。あのパヴァロッティのピアニストで、今回ピアノを弾きながら舞台を監修するウバルド・ファッブリは「イタリア・オペラの歴史がプッチーニで途絶えたように言うのは違う。ロータの偉大な作品があるのだから」と断言。山本耕平をはじめ歌手もそろった。された楽譜が想像でき、しかし響きには奥行きを感じ、随所に斬新な書法も聴こえる。 「チェルニーは毎日同じスケジュールで、1日10~12時間のレッスンのあと作曲の仕事をしていました。集中力は尋常ではないと思いますし、勤勉さとフレッシュな感受性には驚かされます。また洗練されていて、先見の明を持っていた人なので、19世紀を経た現代(いま)も新鮮に感じられるのだと思います」 ピアニストはサロンのメンバーで、演奏順に、秦はるひ、伊藤順一、黒岩航紀、小菅綾、小林えりか、齊藤一也、増田達斗、高橋ドレミ、中平優香、中田雄一朗、鈴木隆太郎、小山田桃という国内外で活躍している気鋭の12人。そして彼らが演奏者の視点で校正を加えた楽譜も発売(春秋社)の運びとなった。使用ピアノはファツィオリのピアノで、録音には世界最大で4本ペダルの最高峰F308が用いられた。 「知られざる名曲もさることながら、チェルニー祭り 世界初! チェルニー:前奏曲とフーガ op.400 CD発売記念コンサート2023.3/22(水)15:00 18:30 豊洲シビックセンターホール問 アトリエ・アッシュ・アートサロン   parisharu2006@gmail.com https://atelier-h.artウバルド・ファッブリ山本耕平CD『チェルニー:12の前奏曲とフーガ 作品400』アールアンフィニMECO-1076 ¥3300(税込)12/7(水)発売奏楽会のクリスマス ニーノ・ロータのオペライタリアオペラの正統的継承者のオシャレでスリリングな傑作を一挙に文:香原斗志 現代人ならヴェルディの音楽は知らなくても、ニーノ・ロータの音楽は聴いたことがあるだろう。『ゴッド・ファーザー』からフェデリコ・フェリーニ監督作品まで、ロマンティックな音楽で満たしたあの作曲家だ。一方、ロータが10を超えるオペラを作曲したことは案外知られていないが、傑作ぞろいだ。 うち3本の喜劇が一夜で楽しめる。第一部は恋のすれ違いを描く《内気な二人》。第二部は教習車内での純愛劇《自動車運転教習所》と、緊張感あふれる《神経症患者の夜》。みな映画のようにスリリングで、同時にオペラとし

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