eぶらあぼ 2022.12月号
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びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロを披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーでは、びわ湖ホールが主催する注目の公演をご紹介します。 びわ湖ホール年末恒例のジルヴェスター・コンサートが近づいてきた。今年の目玉は、来年3月に退任する芸術監督の沼尻竜典が指揮すること。在任16年の掉尾を飾る集大成の一つと言っていいだろう。もう一つの注目点は、現代音楽で有名なルガーノ・パーカッション・アンサンブル(LPE)をスイスから招くこと。沼尻とLPEの共演は開幕曲「マランボ」でいきなり炸裂する。この曲はヒナステラのバレエ組曲「エスタンシア」(1941)の第4曲〈終幕の踊り〉である。アルゼンチンの土俗的な民族舞踊で、打楽器群が大活躍。LPEは、大阪交響楽団の中に入り込んで華々しいクライマックスを演出する。またLPEは今回の来日にあたり、マティアス・シュタイナウアーに新作を依頼し、「ソット・アクア(水の中)」が世界初演される。同名の室内楽曲(1999)はあるが、今回は管弦楽とパーカッションのための協奏曲ということで、どんな曲か楽しみである。 メインの「カルミナ・ブラーナ」(1936)こそが、沼尻とLPEの腕の見せどころだ。作曲者のカール・オルフは教育者としても有名で、子ども教育のオルフ・システムで種々の打楽器を生み出した。この代表作の「カルミナ」ではそんな打楽器が縦横に駆使される。合唱とオーケストラの大規模なカンタータで、ドイツ南部のボイレン(ブラーナ)修道院に伝わる中世の世俗歌集(カルミナ)である。この曲は12音技法や新古典主義から騒音音楽に至る20世紀前半にあって、その方向性を一気に過去に押し戻す。原始主義ともいえるその音楽は、テキストに相応しく、中世かそれ以前に戻ったかのように、旋律、和声、リズムが単純明快である。オルフはこの単純素朴な音楽で人間の根源にさかのぼろうとした。確かに単純な音型やリズム・パターンの反復は、呪術にも通じるような人間の根源的感情と興奮を呼び覚ます。そのオスティナートを最大限に際立たせるのが多種多様な打楽器である。合唱はびわ湖ホール声楽アンサンブルを核とする一般公募のジルヴェスター合唱団。これは楽しみだ。 沼尻竜典のびわ湖ホールでの最大の功績は、「びわ湖を日本のバイロイトに」と言われるように、ワーグナーの主要10作品をすべて上演することである。ワーグナーの複雑に入り組んだスコアを精妙に音化できた沼尻。彼なら「カルミナ・ブラーナ」でその実力を余すところなく発揮し、巨大な合唱カンタータをホールいっぱいに響かせてくれることだろう。 ジルヴェスターならではの華やかな企画もある。「Yokohama Festival Fanfare」を一般公募のジルヴェスター・ファンファーレ隊が演奏する。この曲はブラスの巨匠ヴァンデルローストが作曲した「横浜音祭りファンファーレ」(2013)をオーケストラ用に編曲して、今年沼尻が横浜で演奏したものの再演である。R.シュトラウスの《ばらの騎士》は、沼尻の芸術監督就任の年に取り上げた演目であり、それを組曲版で振り返る。この盛りだくさんのプログラムを桂米團治の司会が軽妙に取り仕切る。なんとも楽しみな大みそかになりそうだ。文:横原千史沼尻竜典12/31(土)15:00 びわ湖ホール 大ホール ルガーノ・パーカッション・アンサンブルびわ湖ホールPreviewびわ湖ホール ジルヴェスター・コンサート2022沼尻竜典芸術監督のタクトで贈る最後の大晦日!

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