Interview34 二人のピアニストが“対決”する東京芸術劇場の「VS」シリーズに、藤田真央と務川慧悟が登場する。いま最注目の二人。務川に意気込みを聞いた。 「VS(ヴァーサス)=対決というのは、音楽ではあまり使わない言葉ですよね。でも、あらゆる共演は、寄り添うだけでなく、音楽的には戦うような瞬間があると思います」 務川は、5歳年少の藤田の躍進をかなり早くから予感していたという。 「最初に彼の名前を知ったのは、彼が全日本学生音楽コンクール小学校の部で第1位になった時(2010年)。三善晃の『ピアノ・ソナタ』を弾いたのですが、僕も中学生の時に弾いたことがあって。あのかなり渋い曲で1位を獲ったのか!というのが最初の印象でした。そのあと、その三善やベートーヴェンのソナタ第6番を弾いたデビューCDを聴いて、巨大な才能を感じました。これはすごいピアニストになるぞと思っていたので、その後の活躍は予想どおりです。 彼の演奏はすごくナチュラル。努力家で、かなり細かく練習すると聞きましたけど、彼のあらゆる表現が、考え込んだ結果ではなく、ごく自然にそこに出てきたように聴こえるんですね。それが非常に魅力的です」 藤田は、務川の音楽の作り方が自分とまったく同じだと言っている。「実は藤田くんとしっかり話をしたのはまだ1、2回だけなのですが、その時に、僕も彼と自分の作り方が似ているなと感じました。演奏の感情みたいなものは最後に出てくる。まずは和声の配置や音のバランス、イントネーションをわりと数学的に考えていって、その小さな具体的なことの積み重ねが最後に大きな流れになるイメージです」 今回彼らが弾くのは4手連弾と2台ピアノ。同じピアノ・デュオといっても、連弾と2台ピアノとでは対極的といえるほど意味合いが異なると話す。取材・文:宮本 明「連弾はサロンや家庭の楽しみとして弾くために書かれているので、やはりその親密な雰囲気が魅力です。一方2台ピアノの魅力は、非常に迫力ある響きと音楽を作り出せるということ。ピアノは88鍵の倍音を駆使してとても豪華な音を作り出せる楽器ですが、それを2台でうまく演奏すると、互いの88鍵が共鳴して魅力が増大します。ただそれは簡単なことではなく、タイミングが一瞬でもずれると、それだけで共鳴の度合いが変わってしまう。室内楽の中でも、特に難しいジャンルだと思っています」 曲目は、連弾でドヴォルザーク「スラブ舞曲集第1集」、2台ピアノでラヴェル「ラ・ヴァルス」とラフマニノフ「交響的舞曲」。「次第に分厚くなっていく流れですね。シンプルな連弾から、音数は多いですが優美さのある『ラ・ヴァルス』。そして恐ろしさも感じさせるような真っ向勝負のラフマニノフ。お客様も、だんだん聴くのに体力が必要とされるような作品になっていくと思います」 10月末の取材時点で、第1ピアノか第2ピアノか、それぞれの担当パートはまだ決めていないそう。そこも含めて、当日が楽しみ!©Yuji Ueno芸劇リサイタル・シリーズ「VS」Vol.6藤田真央 × 務川慧悟2023.2/20(月)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール11/19(土)発売■ 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296https://www.geigeki.jp他公演2023.2/21(火)宮城/電力ホール(ニイタカプラス022-380-8251)Keigo Mukawa/ピアノピアノ界に旋風を巻き起こす二人が人気シリーズで初共演務川慧悟
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