4年ぶりの「フィルハーモニクス」来日が実現する! 二大オーケストラ、ウィーン・フィルとベルリン・フィルのメンバーを中心とする「フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン」の7人は、クラシックの枠をはるかに飛び越え、ジャズにポップス、クレズマーや民俗音楽などジャンルも時代も関係なく、「やりたい曲を楽しくやる」ことで聴衆を楽しませてきた。そのパフォーマンスを日本で前回披露したのは2018年。その後コロナ禍での公演中止を挟み、ついに叶う来日を前に、リーダー役を務めるクラリネットのダニエル・オッテンザマーの話をきくことができた。 「私たちは日本に毎年行きたくて、中止は本当に残念でしたが、今年はやっと実現できそうです。みんな日本が大好きで、このアンサンブルでまた行けることは本当に嬉しいです。12月はスペシャルなプログラムを用意して、ぜひ皆様方と一緒に楽しみたいと思います!」 フィルハーモニクスの活動について尋ねると、忙しいメンバーの2都市での活動にもかかわらず、制約をものともせず頻繁に集まっているという。 「私たちはフィルハーモニクスとしてヨーロッパで多くのコンサートを行っています。ウィーンではコンツェルトハウスで年3回の定期演奏会を、ベルリンのフィルハーモニーでも年に1回は演奏会を行い、それ以外にもヨーロッパ各地でコンサートを開いています」 世界屈指の多忙な楽団、ウィーン・フィルの首席奏者を務めるダニエル・オッテンザマーだが、フィルハーモニクスこそ「やりたいことをできて本当に心躍る時間」と熱く語る。 「会場に来てくださるお客様が楽しくというのはもちろん大事なことですが、なにより私たち自身、このアンサンブルでの演奏がすごく楽しいのです。プライベートの時間にクラシックに限らず好きな音楽をできて、演奏のほかに自分たちで作曲・編曲もしており、オーケストラではできないような音楽をここで演奏できるんです」 フィルハーモニクスとして日本で演奏する面白さについて聞くと、聴衆の国民性のようなものが出ていて興味深い。 「聴きに来てくださる方々は、国によってはすぐに感情を出して反応するところもありますが、日本では最初から感情を表すということはあまりないものの、コンサートが進むにつれてだんだんリラックスして盛り上がっていくんです。フィルハーモニクスではクラシックのように静かに聴くのではなくて、エモーショナルにふるまっていただきたいと思うので、少しずつそうなっていく日本のムードが大好きなんです」 今回は12月公演ということで、曲目には陽気な「フェリス・ナヴィダ(メリー・クリスマス)」など特別な曲もあるが、待望の得意レパートリーも手厚く用意されているという。「150曲くらいレパートリーがあり、可能ならその日にやりたい曲を披露できれば嬉しい」とも語り、全演目は当日に明らかになる趣向の予定。 各メンバーについても楽しそうにコメントしながら「みんな仲が良く信頼できる友人ばかり」と何度も強調していた。「仕事以外のオフの時間に、仲間たちと楽しくやっていくことが一番大事」とのことで、彼にとってのフィルハーモニクスはいわばライフワークのような、純粋な喜びになっているのである。 「今までになかったような、国境がない、限界がないすばらしいアンサンブルといえるでしょう。そしてここには“音楽の自由”があるのです」 名門楽団の首席奏者ダニエル・オッテンザマーとしてではなく、フィルハーモニクスのクラリネット奏者として語るときのリラックスした和らいだ表情がとても印象的で、それを生み出す「音楽の自由 Musikalische Freiheit」こそ彼らの本質に違いない。久しぶりの日本公演についても「今回のプロジェクトを楽しんでもらって、“音楽の自由”を感じていただければ嬉しいです!」と笑顔を見せる。ホールの大小は問わず、その喜びのエネルギーはダイレクトに客席に伝わるはず。久しぶりに自由な音楽がはじけるステージ、ご堪能あれ!Profileウィーン・フィルとベルリン・フィルの精鋭たちが、リミットレスな音楽を生み出すアンサンブル〈フィルハーモニクス〉のクラリネット奏者で創設メンバーのひとり。〈フィルハーモニクス〉はドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、3枚のアルバムをリリースしている。2009年よりウィーン・フィルの首席奏者を務め、ウィーンのクラリネット一家の継承者である。ソリストとしてもロリン・マゼール、グスターボ・ドゥダメル、アンドリス・ネルソンス、ファビオ・ルイージをはじめ世界の著名指揮者・オーケストラと共演。33フィルハーモニクスは、国境も限界もないすばらしいアンサンブルです取材・文:林 昌英
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