eぶらあぼ 2022.12月号
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130CDエクリプス/ヒラリー・ハーンCDCDSACD映像の世紀 バタフライエフェクト オリジナル・サウンドトラック/加古■シューマン:詩人の恋 他/大西宇宙&小林道夫シューマン:詩人の恋/ベートーヴェン:遥かなる恋人に寄す/シェーンベルク:2つの歌 op.1大西宇宙(バリトン)小林道夫(ピアノ)現役トップ級の名手が、1年の長期休暇後に迎えたコロナ禍にあえて録音した、音楽を奏でる喜びに溢れた一枚。持ち前の冴えた技巧は不変どころか、むしろ凄みを増した感。ドヴォルザークの協奏曲はいつになく濃密かつ情熱的で、バック(全体に好演)と一体になりながら、この曲が第一級の名作であることを知らしめる。ヒナステラの協奏曲も燃焼度が高く迫真的。「カルメン幻想曲」は技巧面や民族色を超えた純音楽的表現で魅了する。「エクリプス=日食」は暗闇の後の光明を示唆したタイトルのようだが、まさしくそうした思いに導かれる、傾聴すべきアルバム。 (柴田克彦)1995年に初代『映像の世紀』が初放送されて以降、これまで「新」「プレミアム」と続いた人気ドキュメンタリー番組シリーズの最新版(2022年)サントラ。この番組から生まれ、加古隆の代表作となったテーマ曲〈パリは燃えているか〉を筆頭に、あの心を掴まれる楽曲たちが余すことなく集められている。もちろん“時の”大海原を旅する帆船のイメージを込めた〈グラン・ボヤージュ〉と、「ある一人の人間の想いや決意、行動が様々な連鎖を生み、重なり合って歴史が作られていく…」という今回のコンセプトそのものを描く〈風のリフレイン〉、2つの書き下ろし新曲も収録。 (東端哲也)収録時36歳の俊英バリトン大西宇宙と、89歳の巨匠小林道夫の組み合わせがとてもいい。「詩人の恋」は絶唱といえる。第1曲からピアノの前奏がとても美しく、大西の美声が滑らかにすべり出す。大西が曲ごとに微細なニュアンスをつけ、それに小林が絶妙に応える。第7曲で詩は冷静でも、歌は憤懣やるかたない内心の叫びを吐き出す。こうした熱い歌い回しも大西の魅力だ。シューマンによくある長い後奏では、歌の余韻をかみしめるような小林の音作りが味わい深い。ベートーヴェンは淡白なようで、自然愛や憧憬の気持ちのにじみ出る名唱。シェーンベルクは歌曲の枠組みをはみ出るような野心作で面白い。(横原千史)「変奏曲」をテーマに、時代も国も異なる作曲家3人の作品を収め、「Transformer」と銘打った、岡田奏4年ぶり2作目のアルバム。ラモーの「6つのドゥーブル」はバロック音楽らしいグルーヴ感が瑞々しい。ラフマニノフの「コレルリの主題による変奏曲」は変奏ごとのキャラクターを鮮やかに描きつつ、全体にどこか哀愁のある統一した色調が通底する。シューマンの「交響的練習曲」は奥行きのあるダイナミクスと自然な緩急が美しい。隅々まで丁寧なタッチで奏されていながら、音楽的な勢いは決して停滞することのない、品位溢れるドラマティックな演奏だ。 (飯田有抄)ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調/ヒナステラ:ヴァイオリン協奏曲 op.30/サラサーテ:カルメン幻想曲ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)アンドレス・オロスコ=エストラーダ(指揮)フランクフルト放送交響楽団加古■:グラン・ボヤージュ、パリは燃えているか、風のリフレイン、ザ・サード・ワールド、神のパッサカリア、機械工場、トルストイの手紙、シネマトグラフ、マネーは踊る、時の刻印、未来世紀、睡蓮のアトリエ、愛と憎しみの果てに加古隆(ピアノ)下野竜也(指揮)NHK交響楽団 他エイベックス・クラシックスAVCL-84138 ¥2750(税込)BRAVO RECORDSBRAVO-10010 ¥3300(税込)ラモー:ガヴォットと6つのドゥーブル/ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲/シューマン:交響的練習曲 op.13岡田奏(ピアノ)収録:2021年6月、フランクフルト(ライブ) 他ユニバーサルミュージックUCCG-45062 ¥3080(税込)オクタヴィア・レコードOVCT-00202 ¥3520(税込)Transformer/岡田奏

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