第962回 定期演奏会Bシリーズ 12/13(火)19:00 サントリーホール都響スペシャル 12/14(水)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp 《魔笛》は人気がある。統計によれば、近年も世界中の歌劇場で上演された回数が、《カルメン》や《椿姫》を押さえての1位だ。それには理由がある。メルヘン調で美しい音楽に彩られているから、と言っても外れてはいないが、《魔笛》はもっと深い。昼を象徴するザラストロと夜を象徴する女王が、音楽的に見事に描き分けられていたり、庶民の姿が闊達に描かれていたり、同時代では画期的な「女性の社会参画」を促していたり――。 だが、そういう深みが常に引き出されるわけではない。モーツァルトの音楽とともに歩んできた歌劇場が、練達の指揮者や歌手を揃えて上演してはじヤーノシュ・コヴァーチアンドレア・ロスト ©rakossy peterさに当時の前衛というにふさわしい。 この曲の前にウェーベルン「管弦楽のための6つの小品」をぶつけてきたセンスも心憎い。師シェーンベルクに捧げられた本曲は、新音楽の精神を極度に簡潔な音楽へと凝縮させている。調性や伝統的な管弦楽法から解放された無重力空間で、旋律はぽつりぽつりとしたつぶやきに変容して妖しく煌めき、ほのかな抒情を香らせる。 巨大な管弦楽を用いて荒ぶる想像力を縦横無尽に働かせたブルックナー。めて、モーツァルトが作品に込めた途方もない力が放出される。 そういう歌劇場はどこか。ハンガリー国立歌劇場が有力なひとつであることは間違いない。ウィーン国立歌劇場と並ぶ、ハプスブルク帝国の二大劇場として君臨し、モーツァルトの音楽が育まれた土壌を歴史的に共有しているからだ。 そこに名匠ヤーノシュ・コヴァーチの指揮。さらに、パミーナはハンガリーが誇る世界的リリック・ソプラノ、アンド11/4(金)18:30 高崎芸術劇場11/5(土)15:00、11/6(日)14:00 東京文化会館11/13(日)15:00 びわ湖ホール問 コンサート・ドアーズ03-3544-4577 https://concertdoors.com※公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。ガブリエラ・フォドール ©rakossy peterレア・ロスト(高崎公演のガブリエラ・フォドールも豊かな声の名花)。夜の女王には音楽性の高いモーツァルトが絶賛されているルツィエ・カンコヴァー(東京(11/5))と、圧倒的に広いレンジの声でヨーロッパを席巻しそうな若きエヴァ・ボドロヴァ(高崎、東京(11/6)、びわ湖)。ほかにも役者は揃った。 実は《魔笛》に備わっている、もう一歩先の魅力。それはこういう歌劇場のこうした布陣で引き出される。エリアフ・インバル ©堀田力丸そして究極の禁欲主義の向こうに新しい世界を創造したウェーベルン。インバル&都響が二つの極を鋭く対比させる。ルツィエ・カンコヴァー ©Dmitry Skvortsovエヴァ・ボドロヴァ ©vecan tibor文:江藤光紀文:香原斗志70エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団23年ぶりに披露される「ロマンティック」第1稿 桁外れの規模によって作曲時にはなかなか理解されなかったブルックナーの交響曲。初演時から評判の良かった第4交響曲「ロマンティック」ですら、初稿を大幅改訂することで演奏にこぎつけた経緯がある。 では、改訂前の「ロマンティック」はどういう姿をしていたのだろうか。この点に早くから関心を寄せていたのがインバルだ。フランクフルト放送響と80年代に録音したブルックナー全集では、整えられた後の版にはない「ロマンティック」作曲当初の生々しい想像力を、切れ味よい演奏で世に知らしめた。 今回の定期・都響スペシャルでは、そんなインバルがこのノヴァーク版第1稿を取り上げる。初めて聴く方は、慣れ親しんだ「ロマンティック」との違いに、他の彼の交響曲以上に衝撃を受けるはずだ。完全に書き直されたスケルツォのほかにも、ブルックナーは攻めまくっており、その複雑さ、尖りぶりはまハンガリー国立歌劇場《魔笛》世界一の人気作の隠れた魅力まで徹底的に味わえる好機
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