11/8(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp 今年の東京シティ・フィルの「第九」は大注目の公演と言っていい。主たる理由は2つある。1つは同楽団の充実ぶり。2015年から常任指揮者を務める高関健のもとで着実に技量を高め、近年は精緻で覇気に富んだハイクオリティの快演を続けている。昨年12月の高関指揮の「第九」もその好例。引き締まった響きの中で様々な動きが生気を放つ演奏は、極めて新鮮かつ感銘深いものだった。それだけに当然、今年も大きな期待がかかる。 もう1つは、指揮が桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎であること。ドイツ音楽の泰斗たる彼は、80歳を超えてますまアンリ・バルダ ©Jean-Baptiste Millot これまで来日公演のたびに聴衆を驚かせてきたフランスの巨匠アンリ・バルダが再びやってくる。2021年公演ではラフマニノフの難曲、ピアノ協奏曲第3番を東京交響楽団と共演して満場の喝采を浴びたが、今回は「ジュノム」の愛称で知られるモーツァルトの傑作ピアノ協奏曲第9番、そしてショパンのピアノ協奏曲第2番を弾く。指揮は横山奏(2018年東京国際音楽コンクール〈指揮〉第2位)、オーケストラは横浜シンフォニエッタ。横山&横浜シンフォニエッタはモーツァルトの交響曲第31番「パリ」も演奏する。す円熟味を増し、持ち前の重厚・壮大さに味わいや行間の妙を加えた、唯一無二の至芸を展開している。長年ポストを有し、強固な信頼関係で結ばれた東京シティ・フィルでは、その巨匠芸を最大限に発揮。21年5月の《ニーベルングの指環》ハイライトや、同年12月と今年6月の「シューマン交響曲全曲演奏シリーズ」における雄大で奥深い表現など、最近も“飯守でしか成し得ない”名演を聴かせている。むろんベートーヴェンの交響曲が以前から造第九特別演奏会 2022 12/28(水)19:00 東京文化会館問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 https://www.cityphil.jp アンリ・バルダの演奏の魅力は、なんと言ってもその豊かな音色から生み出される万華鏡のような多彩な音楽だ。ピアノ・ソナタでも協奏曲でも、それまでに聴いたことのないような世界が広がる。フランス人らしい豊かな感受性、素晴らしいテクニックと音楽への深い理解から作られるバルダの世界は、ピアノ音楽が持つ本当の奥深さを教えてくれる。 今回のプログラムは2曲ともバルダが演奏することを強く願っていた作品左より:飯守泰次郎 ©K.Miura/田崎尚美/金子美香 ©Yoshinobu Fukaya(aura)/与儀 巧/加耒 徹詣の深さを示してきた演目であり、「第九」の曲想が飯守の持ち味に相応しいのも言わずもがな。加えて今回は、ソリストも田崎尚美(ソプラノ)、金子美香(メゾソプラノ)、与儀巧(テノール)、加耒徹(バリトン)と、第一線で活躍する豪華な布陣が揃っている。 飯守が東京シティ・フィルの「第九」を振るのは7年ぶり。円熟を極める巨匠と充実顕著かつ彼を敬愛する楽団がおくる“今だからこそ聴ける「歓喜」”を、ぜひ生体験したい。横山 奏横浜シンフォニエッタだという。モーツァルトのシンプルな音の世界、そしてショパンの抒情性豊かな世界。その対比も興味深いが、さらにそれぞれの作品の奥に潜んでいる音楽の真実というものを、彼の演奏は感じさせてくれるに違いない。80歳を超えても、音楽に対する真摯な追究をやめることのない彼の姿勢は、若いアーティストにも刺激を与えることだろう。この秋の“聴きもの”のひとつとなるに違いない。文:柴田克彦文:片桐卓也63飯守泰次郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団円熟の巨匠がおくる唯一無二の“歓喜の歌”アンリ・バルダ ピアノ協奏曲の夕べモーツァルトとショパン、待望の組み合わせで聴く名匠の深遠
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