CDCDCDCD150トリスタン/イゴール・レヴィットザ・スーパーチェリスツ/スーパーチェリスツ昔の歌 安川加壽子門下生発表会より/青柳いづみこ「トリスタン」の音楽史的な意味を考えさせられるアルバムだ。ピアノによるトリスタン前奏曲では終わりのない和音がぽつりぽつりと寂しげに鳴り響く。ヘンツェの「トリスタン」はワーグナーのうつろな変奏に始まり、ブラームスの第1交響曲など歴史的名作の引用をちりばめながら、豊饒な音の絨毯を織り上げる(かつての録音よりも電子音がオーケストラに溶け込んでいる点に時代の変化を感じる)。マーラーの第10交響曲はヘンツェと同様、個人的な情感の最も深い表現であるとともに、歴史の転換点を示してもいる。“禁断の果実”以前にあるリストの音楽のみが未だ苦悩を知らず、甘美な夢を紡いでいる。(江藤光紀)ユーフォニアムやテューバのプレイヤーならずとも本アルバムは必聴! ともすると地味で縁の下の力持ち(主にテューバ?)とのイメージがついて回るこれらの楽器からなんとスピーディーで魅惑的な音楽が飛び出してくることか! 収録曲11曲すべてがオリジナル作品、いずれの作曲者も楽器の特性を知り尽くしており多彩な表現に富む。意外なイメージもある軽快な走句や2つの同属楽器4本だからこそのハーモニーの味わい、そして錯綜するリズム処理は見事の一語。ソロの快感とアンサンブルの妙味を併せ持つこの編成、もちろん名手4人の腕前あってこその成果。弦楽四重奏に劣らぬ豊穣な世界。(藤原 聡)古川展生を中心とする10人の凄腕チェリストたちのアンサンブル。冒頭の「リベルタンゴ」でその技量の高さに驚かされる。瞬発力とリズムの切れ味の鋭さ。文句なくチェロの魅力の全てを味わうことができる。「G線上のアリア」はしみじみとした抒情と内声の絡みが美しい。「チャルダーシュ」後半のラッサンは唖然とするほどの巧さ。メンバーの小林幸太郎の編曲もチェロの能力と魅力を知悉していて見事。「カルメン幻想曲」は楽しい。名旋律の宝庫であることに改めて気づかされる。古川作曲の「エレジー」も味わい深い。最後の「鳥の歌」は平和を祈る気持ちが込められて感動的だ。(横原千史)戦後日本のピアノ界において多大なる功績を残したピアニスト・教育者の安川加壽子。とりわけフランスの音楽および演奏スタイルの普及における貢献は大きい。本盤の演奏者である青柳いづみこも門下生の一人。今回は安川門下生発表会のプログラムを一部再現し、クープランなどフランス・バロックから20世紀のプーランクに至るまで幅広い選曲がなされている。1950~60年代、子どもたちにこのような曲を演奏させていた安川の革新性が窺える。エラールピアノを使用した青柳の演奏は音の美しさ、旋律の歌いまわしの繊細さが素晴らしく、一つの物語を見ているかのようなディスクだ。(長井進之介)リスト:愛の夢第3番、超絶技巧練習曲集 第11番「夕べの調べ」/ヘンツェ:トリスタン/ワーグナー(ゾルタン・コチシュ編):楽劇《トリスタンとイゾルデ》より〈第1幕への前奏曲〉/マーラー(ロナルド・スティーヴンソン編):交響曲第10番より〈アダージョ〉イゴール・レヴィット(ピアノ)フランツ・ヴェルザー=メスト(指揮)ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ソニーミュージックSICC 30609〜10(2枚組) ¥3960(税込)マルティーノ:ファンタジー/ヨーク:PCカルテット「トラディショナル・ヴァリューズ」/ジェイコブ:4つの小品/フォーブス:コズミック・ヴォヤージュ/ペイン:テューバ四重奏曲/ブラ:セレスティアル組曲/新井秀昇:祭輪舞/スティーヴンス:パワー/スノーデン:テイク・ディス・ハンマー 他ボトムズ・アップ・ユーフォニアム・テューバ・カルテット【安東京平 新井秀昇(以上ユーフォニアム) 次田心平 ピーター・リンク(以上テューバ)】妙音舎MYCL-00026 ¥3300(税込)ピアソラ:リベルタンゴ/J.S.バッハ:G線上のアリア/サン=サーンス:白鳥/モンティ:チャルダーシュ/古川展生:エレジー(以上小林幸太郎編)/ビゼー(W.トーマス=ミフネ編):カルメン幻想曲/カタロニア民謡(カザルス、小林編):鳥の歌 他スーパーチェリスツ【江口心一 大宮理人 奥泉貴圭 小林幸太郎 佐山裕樹 中条誠一 西方正輝 古川展生 森山涼介 山本大(以上チェロ)】アールアンフィニMECO-1074 ¥3300(税込)プーランク:村物語(子供のための小品)/バロー:子供たちへの物語/ダカン:「クラヴサン曲集」より〈カッコウ〉/カゼッラ:子供のための11の小品 op.35/クープラン:「クラヴサン曲集第3巻」より〈小さな風車〉/デュフリ:「クラヴサン曲集第2巻」より〈ラ・ヴィクトワール〉/レヴィ:子守歌 他青柳いづみこ(ピアノ)コジマ録音ALCD-7285 ¥3080(税込)Bottoms Up!/ボトムズ・アップ・ユーフォニアム・テューバ・カルテット
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