eぶらあぼ 2022.11月号
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CDCDCDCD148ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番/辻井伸行&アシュケナージ&シドニー響親愛なるザクセン人 〜ハッセ・ヘンデル作品集〜/青木洋也&高橋明日香フェリア/菅沼聖隆ドビュッシー:前奏曲集第1巻、寺嶋陸也:12の前奏曲/橋本京子辻井のCDデビュー10周年記念ボックスからの分売。2020年に引退したアシュケナージとの今や貴重なコラボによるシドニーでのライブ録音である。辻井のソロは、粒立ちの良い音で実に美しく、なかでも第1楽章のカデンツァや第2楽章のニュアンス豊かな表現が聴きもの。アシュケナージとの連携も緊密で、美感と力感を併せ持った精妙な演奏が終始展開されている。曲を熟知したアシュケナージ率いるバックも、芳醇かつ堂々たる表現で曲の真価を表出。正攻法のアプローチの中で、辻井の妙技とベートーヴェン音楽の魅力を満喫できる好アルバムとなっている。 (柴田克彦)貴重な日本人カウンターテナーの1人として、バッハ・コレギウム・ジャパンなどで美声を披露する一方、指揮者としても活躍する青木洋也。当盤ではリコーダーの気鋭の名手・高橋明日香を迎えて、共にドイツ出身でイタリアに学び、欧州中に名を轟かせたハッセとヘンデル、2人の作曲家にスポットを当てた。青木の声は、透明感がありつつも温か。魂を込めた丁寧な歌い回しは、言葉の一つひとつに命を宿らせてゆくかのよう。そして、細かなニュアンスまで掬い取り、ぴたりと寄り添ってゆくリコーダーの音色。もはや“二重唱”と言っても良かろう。饒舌に過ぎぬ、しかし、存在感ある通奏低音の3人も好演だ。(笹田和人)クラシック・ギター界に繁る“大樹”の父たる福田進一が、有望な新人を発掘するシリーズの第7弾。1996年生まれの菅沼聖隆は、本場スペインの第8回セビリア国際ギター・コンクールを21歳の若さで制覇した逸材。本盤は英国ウォルトンと仏国ディアンスで幕を開け、菅沼が実際に旅した南米の国々を巡り、大曲と小品のセットが押し寄せる心躍る構成。特にヒナステラの躍動感あふれるソナタの後、ボリビアのドミンゲスによるアルバム表題曲を即興演奏する流れがシビれる。特製「左利き用ギター」を使用し、堂々たる体躯から繰りだされる豊かな音色に魅了された。(東端哲也)30ヵ国以上の国を周り、多彩な演奏活動を行ってきたピアニストの橋本京子は楽曲の本質を深く捉えた演奏で多くの人々を魅了している。そんな彼女の最新盤はドビュッシーと寺嶋陸也の前奏曲。ドビュッシーの演奏では、表題の情景が鮮やかに浮かんでくるような多彩な音づかいが魅力的で、「パックの踊り」や「ミンストレル」などリズムの特徴的な作品が特に印象に残る。寺嶋の作品はドビュッシーの練習曲集を思わせる実験的な響きが聞こえてくるもので、高度な技巧も凝らされている。倍音もうまく利用しながら様々な響きを生み出す橋本の演奏が楽曲の魅力をさらに引き立てていく。(長井進之介)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番辻井伸行(ピアノ)ウラディーミル・アシュケナージ(指揮)シドニー交響楽団ヘンデル:カンタータ「わたしの心は脈打つ」、リコーダー・ソナタ ト短調/ハッセ:カンタータ「美しき人よ、わたしは去る」、リコーダーのためのカンタータ、カンタータ「名前」/伝ヘンデル:カッセル・ソナタ第3番 ヘ長調青木洋也(カウンターテナー) 高橋明日香(リコーダー) 武澤秀平(チェロ) 瀧井レオナルド(テオルボ) 山縣万里(チェンバロ)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9048 ¥3080(税込)ウォルトン:5つのバガテル/ディアンス:タンゴ・アン・スカイ/ヒナステラ:ソナタ op.47/ドミンゲス:フェリア/ポンセ:ソナタ第3番、エストレリータ/作曲者不詳:コントラダンサ/ラウロ:ベネズエラ組曲菅沼聖隆(ギター)ドビュッシー:前奏曲集第1巻寺嶋陸也:12の前奏曲橋本京子(ピアノ)収録:2016年10月、シドニー(ライブ)エイベックス・クラシックスAVCL-84139 ¥2750(税込)マイスター・ミュージックMM-4510 ¥3300(税込)ナミ・レコードWWCC-7973 ¥2750(税込)

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