eぶらあぼ 2022.10月号
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10/1(土)15:00 京都/青山音楽記念館 バロックザール10/23(日)14:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 https://www.proarte.jp94Interview中村均一(サクソフォン)& 西上和子(ピアノ/作曲)感謝の想い、音楽に込めて 名サクソフォン奏者の中村均一が、青森県八戸市の吹奏楽コンクールの審査員として滞在中、突然の大動脈解離に襲われたのが2017年7月。幸いなことに発見と対処が早かったことで一命をとりとめ、演奏家としても復帰。様々な形で尽力してくれた八戸の方々への感謝をきっかけに発足したプロジェクトが「八戸でみたゆめ」である。中村「倒れた記憶はなく、目が覚めたら1週間経っていて、手術は15時間半かかったそうです。本当にドクターや看護師さんたち、連盟の皆様のお力で助かりました。最初は握力がなくて箸も握れず、音楽家人生は諦める覚悟もしましたが、リハビリに1年かけて吹けるようになりました。2019年にはお礼の気持ちでCDを作り、コンサート開催も実現したのです」 その復帰の際に相談を受けたのが、作曲家・ピアニストの西上和子。中村とは20年来の交流で共演を重ね、新曲を書いたこともあり、中村は「西上さんのピアノはものすごく音がきれい。作品も美しく、ワクワクします」と全幅の信頼を置く。西上「ピアノでお誘いいただき、復帰した中村さんのサクソフォンの音色を聴いて、命がなかったらこのつややかな音も聴くことができなかった、と思うととても心に響きました。それからいろ俣野修子室内楽シリーズ “楽興の時 plus”上村 昇(チェロ) & 俣野修子(ピアノ) デュオリサイタル名手が紡ぐ王道のドイツ・プログラム 意欲的かつ先鋭的な演奏活動の一方、後進の指導にも力を注ぐピアノの俣野修子が、様々な楽器の名手たちと共演を重ねる室内楽シリーズ“楽興の時 plus”。今回は、俣野との共演経験も多い、チェロの上村昇を迎えてのデュオリサイタルで、ベートーヴェンを軸としてドイツの傑作を紡ぐ。 ジュネーヴ音楽院在学中からスイスやフランスなどで演奏活動を展開し、帰国から40年近くにわたって、リサイタルや国内外の実力派との共演を重ねる俣野。様々なコンセプトに基づく、多くの演奏会シリーズにも取り組んでいる。一方の上村は1979年、カサド国際チェロ・コンクールを制して以来、日本を代表する名手として活躍を続けている。 ステージでは、楽聖が書いた佳品「モーツァルトの《魔笛》の主題による12の変奏曲」「ソナタ op.69」と、濃密な歌心に満ちたシューマン「幻想小曲集 op.73」(チェロ版)、ベートーヴェンら先人からの影響が色濃いブラームスんな発想が浮かび、奏者としても心の底から奏でられる曲を書きたいという気持ちが強くなっています」 コロナウイルス禍で活動は中断していたが、その間に2枚目のCD『幸せな地球の物語』を作り、今秋には同タイトルを冠した公演を東京、名古屋、大阪で行う。趣旨に賛同して集うのは、彼らと気心の知れたチェロ寺田達郎、ファゴット森純一(名古屋のみ野村和代)に、N響首席を長く務めたクラリネット磯部周平。公演前半は西上の作品で開始して、ラフマニノフ、バッハからデニゾフ、ロータの稀少作までクラシックの名旋律を、後半は西上の5曲による組曲形式の同タイトル作品を聴かせる。西上「組曲の5曲のうち4つは海、花、雨、森がテーマで、水=命の輪廻みたいなイメージです。最後の曲の前には『Happiness』という人類の誕生の喜びをうたった曲も入れて、このタイトルでつなげて聴いていただきたいと思いました」八戸でみたゆめ Vol.2 〜幸せな地球の物語〜 中村均一と仲間たち 202210/1(土)18:00 王子ホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp他公演10/25(火) 名古屋/電気文化会館 ザ・コンサートホール(クラシック名古屋052-678-5310)11/13(日) ドルチェ・アートホール Osaka(06-6377-1117)上村 昇中村均一取材・文:林 昌英文:笹田和人俣野修子「ソナタ op.38」を披露。ピアノとチェロの深遠なる対話に耳を傾けたい。西上和子中村「西上さんの曲は命に関わるものがテーマになっています。前半最初の西上さんの『さだめ』は悲しい曲ですが、幸せというのはつらいことも含めてのこと、というちょっとしたメッセージでもあります」 中村は「せめて少しでも辛い思いをしている人の心が軽くなるような音楽を奏でたい」とのコメントを公演プログラムに寄せている。全国各地に美しい音色を届けて、温かい輪を広げていく。

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