eぶらあぼ 2022.10月号
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第527回日経ミューズサロン 大西順子 ピアノ・ソロ圧倒的な存在感で魅了するジャズ・ピアニストの稀少なソロ・パフォーマンス文:高坂はる香 1990年代にニューヨークでジャズ・ピアニストとして活動を始め、往年のミュージシャンたちのスピリットを継承しつつも、常に新たな挑戦を続ける大西順子。クラシック音楽ファンには、引退宣言の後、2013年に小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラと「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏して舞台復帰したことが印象に残る人も多いだろう。近年は、自身のクァルテットでの活動はもちろん、オーケストラのプロデュースや、村上春樹のイベント「MURAKAMI JAM」の音楽監督など、活動の幅を広げている。10/25(火)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227 https://stage.exhn.jp90Interview紫園 香(フルート)バロックから現代まで、40年のキャリアを経た円熟の境地 紫園香は、東京藝術大学附属高校、同大学、同大学院をすべて首席で卒業。20世紀最高の演奏家であり指導者と評されるマルセル・モイーズの薫陶も受けたフルーティストである。日本はもちろん、世界24ヵ国で演奏を行い、高い評価を得てきた彼女が、「時空を超えて」と題し、様々な時代の作品を並べたデビュー40周年記念リサイタルを行う。 「今回のリサイタルで重要な存在がチェンバロです。学生時代から大変魅力を感じており、いつかこの楽器との共演で、様々な時代の作品を扱うリサイタルをやりたいと思っていました。そして5年前、ライプツィヒの聖トーマス教会で演奏した折、別の日のオルガンアーベント(夜のオルガンコンサート)で、バロックから現代まであらゆる作品をモーツァルト時代のオルガンの音色で聴けたことを通して、その想いがさらに強くなっていったのです」 前半はオール・バッハだが、後半はヴィラ=ロボスの「フルートとチェロのためのジェット=ホイッスル」を挟み、今回の共演者でもある藤井一興の新曲、さらにマルティヌーの作品と多彩なプログラムとなっている。フルートとチェンバロのあらゆる可能性に出会えることだろう。なかでも存在感を放つのが藤井の「今賜わるアッシジの聖フラン そんな彼女が、日経ミューズサロンに登場、貴重なピアノ・ソロによるライブを行う。大西は日々、ステージでひらめいたフレーズや和音を思い通りに奏でるため、工夫しながら鍛錬を重ねているという。そして本番では見事にピアノを手なずけ、力強いタッチでフレッシュな音楽を生み出してゆく。そんな彼女のピアニズムをすみずみまで聴くことができる、またとない機会だ。チェスコの教え」だ。 「委嘱の際にお願いしたのは編成のみで、内容についてはすべてお任せしたところ、聖フランチェスコという多くの人々に愛される聖人をテーマとした作品を作ってくださいました。この曲は真理を表す三角形と、対比する逆三角形のモティーフによって現代世界への警告を表現しています。その間に響く鳥のさえずりは平和や自然創造からの語りかけを彷彿とさせます。現代の斬新な響きの中で、平和への普遍的な思いを味わっていただけると思います」 作曲とチェンバロを担当する藤井と紫園は長きにわたる共演歴があり、深い信頼関係に裏打ちされたアンサンブルを届けてくれるはずだが、今回はさらにヴァイオリンの沼田園子、チェロの北本秀樹という名手も登場する。 「沼田さんは学生時代の同期で、バロック音楽にもとても造詣の深い演奏家です。また初共演となる北本さんは通奏低音の名手でもあります。技術、表現共に多彩で深いものを求められ紫園 香 デビュー40周年記念 フルートリサイタル 〜時空を超えて〜10/17(月)19:00 東京文化会館(小)問 ミリオンコンサート協会03-3501-5638 http://www.millionconcert.co.jpるプログラムで、素晴らしい方々がご一緒してくださるのはとても心強いです。チェンバロの音律は、ヴァロッティ音律(バロック時代に考案された調律法のひとつ)を選びました」 長らくあたためてきた想い、そして挑戦が込められた、紫園にとって節目のリサイタル。聴き手にも新たな体験を与えてくれることだろう。取材・文:長井進之介

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