eぶらあぼ 2022.10月号
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87Interview礒 絵里子(ヴァイオリン)デビュー25周年、楽の朋友達と臨む渾身の“W「四季」”取材・文:山田 良 取材協力:アールアンフィニ ヴァイオリニストの礒絵里子が、デビュー25周年を記念して、10月11日に紀尾井ホールでコンサートを開催する。ソロ活動に加え、室内楽、アウトリーチ活動など、多角的な演奏活動を精力的に行っている礒は、これまでも5年毎に自主リサイタルという形で、演奏家としての節目を刻んできた。今回は合奏団を率いて、ピアソラとヴィヴァルディ、2つの「四季」に挑む。 「このところ、ピアニストと共演の、いわゆるリサイタルが続いていたので、大きな節目である25周年記念コンサートでは、精鋭の合奏団のもと、ソリストとしてやってみたかった」 そんな礒の意気込みを支える特別編成合奏団を構成するのは、音楽を通して彼女と長年の付き合いがある知己朋友の面々。コンマスは、礒が「姉妹のように育った」という、仙台フィルのコンマス、神谷未穂。他にも「小学生の時から知っている先輩ヴァイオリニスト」佐份利恭子、椿三重奏団でも共演しているチェロの新倉瞳をはじめ、ピアソラ作品の演奏では定評があるコントラバスの加藤雄太、など実力十分の「気心のしれた仲間」が、強力に脇を固める。 「アンサンブルでは特に、共演者に対中心に、古典期の仕様の楽器を操る名手たちが、柔軟に編成を変えつつ、緻密で滋味あふれる快演を聴かせる。 重岡は今回、アントン・ヴァルターモデル(1800年頃)の楽器を使用。三宮と福川に、満江菜穂子(クラリネット)と村上由紀子(ファゴット)が加わり、28歳のモーツァルトと26歳のベートーヴェンが、この編成のために書いた五重奏曲を取り上げる。ステージではこれらして〈耳を開く〉ことが大事。今回のステージでは指揮者がいないが、奏者が相互にアンテナを張って、一つのコンサートを創っていく醍醐味を今から楽しみにしている」 ピアソラとヴィヴァルディの「四季」を一つのステージで演奏する“W「四季」” プログラムは、昨今少なくないが、企画に一年をかけ、朋友の絆で結ばれた実力派の奏者たちが、ソリストのデビュー25周年という節目への意気込みを支える今回のステージは、きっと出色のものになるだろう。 今回演奏するデシャトニコフ編曲の「ブエノスアイレスの四季」には、ヴィヴァルディの「四季」からのモチーフが挿入されていたりして、魅力的なエディション。タンゴ独特のヴァイオリンの奏法も意識していく、と礒は言う。 「次の30周年までの間に、自分が成長できていないといけない。いつまでも違和感なく演奏できるように心身のケアも必要。歩みを止めないために」 来秋には椿三重奏団による2枚目のアルバムリリース予定もある。なお、デビュー25周年記念コンサート 礒 絵里子 with Friends〜2つの「四季」10/11(火)18:30 紀尾井ホール問 1002(イチマルマルニ)03-3264-0244 https://www.1002.co.jp10/20(木)19:00 Hakuju Hall問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 https://www.bflat-mp.com他公演 10/21(金) ムラマツリサイタルホール新大阪(ガンマオリオニス gammaorionis.concert@gmail.com)今回のコンサートでは、礒にとって初めてのライブ・レコーディング(アールアンフィニ・レーベル)を行い、リリースを予定している。©FUKAYA Yoshinobu/auraY2文:笹田和人重岡麻衣2曲に、重岡のソロによるソナタ第14番「月光」も披露される。重岡麻衣と愉快な仲間たち 〜古典派オリジナル楽器によるピアノクインテット〜 CD発売記念コンサート古楽界の名手が集い奏でるアンサンブルの妙技 歴史的鍵盤楽器の名手として、ソロやアンサンブルの通奏低音で活躍する重岡麻衣が、ピリオド管楽アンサンブル「レ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウ」とフォルテピアノで共演した新アルバム『モーツァルト&ベートーヴェン:ピアノと管楽のための五重奏曲』を発表。10月、発売記念の演奏会を東京と大阪で開く。 東京藝大・同大学院からベルギーに学び、現在は東京を拠点に活動する重岡。一方のレ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウは2021年の結成以来、バッハ・コレギウム・ジャパン首席の三宮正満(オーボエ)と元N響首席の福川伸陽(ホルン)を

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