eぶらあぼ 2022.10月号
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第5回たかまつ国際古楽祭9/30(金)~10/2(日)直島ホール、穴吹学園ホール、オリビアン小豆島 夕陽ヶ丘ホテル問 たかまつ国際古楽祭実行委員会080-5665-7050 https://mafestivaltakamatsu.com10/5(水)19:00 川口リリア 音楽ホール問 リリア・チケットセンター048-254-9900 http://www.lilia.or.jp78Interview柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ/たかまつ国際古楽祭芸術監督)瀬戸内の街や島から発信するユニークな企画満載の3日間 高松市出身で、欧州古楽シーンの最前線で活躍するフラウト・トラヴェルソ奏者・柴田俊幸が芸術監督を務める古楽祭の開幕が迫ってきた。5回目の今年も高松市内でのメインコンサートのほか、音楽と食のコラボ企画「バッハ飯 in 小豆島」、さらに現代アートの聖地、直島での「島古楽」コンサートやトークイベント「ハーディ・ガーディ集会」など、多彩で興味深いプログラムが予定されている。 「島の住民の皆さんからコンサートをやりたいという声が挙がって地元と共に考えプロデュースしました。地方に音楽の種をまく草の根レベルの活動を続けて、いよいよ芽が出てきたのを実感できて嬉しい」と語る柴田。 「直島にチェンバロやハーディ・ガーディが歴史上初上陸(笑)。座布団も用意して気取らずに聴いてもらいます。クラシック初心者がふらりと立ち寄って楽しめる気軽さの一方、古楽マニアの視点からも満足できる工夫をしています」 小豆島での「バッハ飯」企画では、1716年にハレでバッハが食べた晩餐会メニューを忠実に再現して、一流の食と演奏を掛け合わせた極上の時間を提供するという。 ユニークな視点の企画構成の背景には、柴田の確固とした狙いがある。 「初めて古楽体験する時にこそ一流のでも、そのたびに彼女は、「ではどうしよう?」と自問自答しつつ乗り越えた。敬愛する大ソプラノ、マリエッラ・デヴィーアと同じく、脇園も「無駄口を叩かず、ひたすら歩む」歌い手なのである。 深い紅色を思わせる響きを有し、ベルカント・オペラに傾注する脇園。モーツァルト、ロッシーニなどを歌う川口でのステージは声楽ファンなら聴き逃せぬ一夜に(ピアノ:丸山貴大)。名花の「道の究め方」を目の当たりにしていただこう。演奏を聴いてもらい、『凄い!』という体験をしていただきたい。それが記憶に残ると聴き手は繰り返し足を運ぶようになり、音楽界の底上げにもつながる。そういう仕掛けを音楽祭で作るのが大事です」 メインコンサートには豪華な奏者が集結だ。リコーダーの濱田芳通、ホルン福川伸陽やオーボエ三宮正満らのレ・ヴァン・ロマンティーク・トウキョウに加え、ベルギーからバルト・ナーセンスとアンソニー・ロマニウクの鍵盤奏者2人が来日。バロックからモーツァルト、ベートーヴェンのピアノと管楽のための五重奏曲まで、たっぷり聴かせてくれる。 とりわけ柴田とロマニウクは欧州での共演やCD録音も評価が高いが、今年の「東京・春・音楽祭」における縦横無尽の即興演奏も印象的だった。 「演奏に際して、楽譜に記されているものだけを尊重する19世紀以降の“しきたり”を取っ払い、演奏者自身がふつうに即興演奏することで音楽にもう一度血が通い、より生き生きする。その感覚が重要ですね」 このメインコンサートでは、曲間に名手が繰り出す即興の妙技にも大注目だろう。 今年のテーマ「チルい古楽!」とは、のんびり、まったり、リラックスを意味する。瀬戸内の海と街と島に響く音楽は、間違いなく人々を幸せにするはずだ。©Malou Van den Heuvel取材・文:朝岡 聡©Ambra Iride Sechi脇園 彩 メゾソプラノ リサイタル欧州の主要歌劇場を席巻するするディーヴァの貴重なステージ文:岸 純信(オペラ研究家) 「自分で未来を切り拓く人」── それがメゾソプラノ脇園彩である。日本人離れしたスケールの歌声を持ち、ミラノ・スカラ座をはじめ世界の大歌劇場で活躍。昨年は、新国立劇場でもロッシーニ《チェネレントラ》に主演し、成功したばかりである。 そこで今回、彼女の経歴を当たってみたら、気づいたことが一つ。脇園は、「歌の道を志したその時から既に、自分の特性を把握できており、それを伸ばすことに人生を賭けた」人であった。イタリア留学時は、言葉が上手く話せず部屋に引きこもったりもしたという。

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