eぶらあぼ 2022.10月号
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10/18(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京コンサーツ03-3200-9755 https://www.tokyo-concerts.co.jp74Interview及川浩治(ピアノ)“ロマン派ガラ・コンサート”で希望や夢を分かち合う 及川浩治のコンサート「名曲の花束」ができます。またピアノは、人の声よは今年で6年目を迎える。名作の選択り音域が広く、一人でオーケストラのとその組み合わせによって、毎回テーようにハーモニーが作れます。そうしマ性を帯びたリサイタルとなっている。た強みを最大限に活かして、作品の魅 「今回は、互いにリスペクトし合ったロ力をお届けしたいですね」マン派の作曲家たちに焦点を当てま 曲の持ち味を伝えようと、インタす。ピアノ曲のみならず、リスト編曲ビュー中も時に朗々と歌って聞かせての歌曲やオーケストラ作品もお届けしくれる及川。心は常に歌で満ちている。 「僕は学生時代からよく歌の伴奏をます。リストは初めて“リサイタル”とやってきたし、自分でも歌うのが大好いう形態でコンサートを行ったピアニきなんです。かつてマリア・カラス・コストです。彼の公演スタイルに立ち返ることも意識して、 “ロマン派ガラ・コンクールで演奏した際、弾きながら自ンサート”にしようと考えました」然と歌っていたらしい。お世話になっ シューマンの「献呈」や「春の夜」、た審査委員長のレフ・ヴラセンコ先生シューベルトの「魔王」「アヴェ・マリア」からは『ちょっと声が大きかったよ』とといった声楽曲は広く愛される名旋律言われてしまいました(笑)」だが、リスト編のピアノ版は音数が多く 曲順には、及川の伝えたい今の思い技巧的だ。が込められている。 「今は不安の多い時代です。しかしショ 「『アヴェ・マリア』などは3段譜で書かパンやリストたちの時代にも、やはり戦れており、両手で中音域の主旋律を弾争や疫病はあった。人生にはさまざまきながら、高音域・低音域で豊かな伴奏を奏でる。そんなリストの書法は、メなシーンがあります。『トロイメライ』のような夢と優しさに満ちた曲で幕をロディーを浮き立たせるのが難しいで開け、中盤には『荒野の狩』や『死の舞すが、いかに声楽のように響かせるかが肝心です。ピアノという楽器は音が踏』のようにおどろおどろしい作品も配出た瞬間から減衰してしまうという弱点があります。しかし、音と音との関係性やバランス、調性の移ろいなどを意識することで、声や弦楽器や管楽器を思わせ、音があたかも膨らみながら繋がっているかのように表現することに、ハープが木の葉のように舞うマーラー「アダージェット」(交響曲第5番より)と、過去の巨匠たちの創造に目を向ける。弦楽合奏で篠﨑をサポートするのはベテラン大谷康子(ヴァイオリン)が率いる精鋭オケ。 さらに2020年に書かれたばかりの権代敦彦「鎮魂(タマフリ・タマシズメ)」で創作の現在地を示す。カトリックに根差した独自の死生観に基づき精力的に作曲する権代の近作で、和太鼓の名手・林英哲の打ち鳴らす生命のパルスがハープと協奏する異形の音楽だ。及川浩治 ピアノ・リサイタル 名曲の花束 〜ロマン派〜10/10(月・祝)14:00 サントリーホール問 チケットスペース03-3234-9999 https://www.ints.co.jp他公演10/1(土) 静岡/青嶋ホール(054-253-6480)10/16(日) 大阪/ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)置します。祈りの『アヴェ・マリア』を経て、おしまいは包容力のある《タンホイザー》序曲で、希望を抱き、新たな始まりを感じていただきたいです」 名曲には、苦しみ、悲しみ、希望、夢を分かち合おうとする力があると語る及川。その力を「花束」から存分に受け取りたい。取材・文:飯田有抄文:江藤光紀©満田 聡 ©Yuji Hori篠﨑史子ハープの個展ⅩⅤ 50周年記念ハープの開拓者が示す創作の現在地 篠﨑史子はハープというソロとしては決して光の当たることの多くなかった楽器の可能性を、作曲家との協業によって切り拓いていったもっとも重要な奏者で、委嘱初演作は40におよぼうとしている。未知へのチャレンジの場「ハープの個展」もいよいよ第15回、50周年というマイルストーンを迎える。 プログラムはヘンデルのハープ協奏曲に始まり、ハープの透明な音色が神秘と官能を描き出すドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」、さらには永遠の時を想わせる甘美な流れの上

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