eぶらあぼ 2022.10月号
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池辺晋一郎 プロデュース 日本の現代音楽、創作の軌跡 第4回「1932年生まれの作曲家たち」多様性際立つ時代の空気に耳をすます10/7(金)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp10/28(金)19:00、10/29(土)15:00 水戸芸術館コンサートホールATM問 水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000 https://www.arttowermito.or.jp73 昭和一桁生まれは宿命を背負った世代だ。物心ついた頃は日中戦争、思春期にかけては太平洋戦争で国に命を捧げるよう刷り込まれ、実際、彼らの身近で多くの人が亡くなった。終戦で世界観が百八十度変わる。焼野原からの再出発。物質的にも精神的にもダメージを受けた上の世代に代わり、若い彼らのエネルギーが復興を導いた。 池辺晋一郎のプロデュースによる「日本の現代音楽、創作の軌跡」は、1929~33年生まれの作曲家たちにスポットを当てたユニークな企画で、死生観や価値観の大変動を創作のエネルギーへと変えていったこの世代の池辺晋一郎 撮影:武藤 章中川賢一 ©Shuhei NEZU創造を、俯瞰的に振り返る。第4回は1932年(昭和7年)生まれを特集する。 フランスに学んだ後、最先端の技術や研究成果を取り入れた端山貢明(ピアノ・ソナタ)や丹波明(クインクエ)の、凄まじいエネルギーをまき散らす音楽に挟まれるのは、素朴な歌心に満ちた福島雄次郎(詩曲)、メロディーに加えその人柄でも大衆の心をつかんだ山本直純(いとしのブラックマリー)、小林亜星(タンゴ・ハポネス)らの多彩な創作。安倍圭子の伝説的なマリンバ・リサイタルで初演された湯山昭のサク尾池亜美セバスチャン・ジャコーに活躍の場を広げる藤田真央は、近年とりわけモーツァルトに力を入れて取り組んでいる。ソニークラシカルとはモーツァルトのピアノ・ソナタ全集のリリースでワールドワイド契約を結んだ。今回演奏するのは名曲中の名曲、ピアノ協奏曲第23番。あたかもモー平野公崇 ©ノザワヒロミチ藤田真央 ©Dovile Sermokasツァルトその人になりきったような天衣無縫の名演を期待できそうだ。 もちろん、水戸室内管による交響曲第40番も大きな聴きものとなる。精鋭たちが集う一期一会のモーツァルトが、忘れがたい体験をもたらしてくれることだろう。文:江藤光紀文:飯尾洋一塚越慎子ソフォンとのデュオ曲(ディヴェルティメント)など、日頃耳にする機会が少ない重要作も並ぶ。様々なタイプ・編成からチョイス、演奏には、中川賢一(ピアノ)、尾池亜美(ヴァイオリン)、平野公崇(サクソフォン)、塚越慎子(マリンバ)ら今後を担う若手・中堅を贅沢に配したあたりに、池辺の先達への敬愛と未来への責務が感じられる。 戦争を知る人は減ったが、先行きは不透明になりつつある。平和のもたらす文化の豊かさを噛みしめる機会にもなるのではないか。水戸室内管弦楽団 第110回定期演奏会新たな時代を築く若き才能の競演 水戸室内管弦楽団の第110回定期演奏会は、次代を担うふたりの気鋭を迎えて、オール・モーツァルト・プログラムが組まれた。ひとりはフルートのセバスチャン・ジャコー、もうひとりはピアノの藤田真央。今もっとも注目される豪華ソリストたちが登場するとあって人気を呼びそうだ。 今秋より水戸室内管の正メンバーとなるセバスチャン・ジャコーは、先頃ベルリン・フィルの新首席奏者に選ばれたというビッグニュースが話題になったばかり。1987年ジュネーヴ生まれで、2013年の神戸国際フルート・コンクールで第1位を獲得。これまではライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の首席奏者を務めていた。今回演奏するのはフルート協奏曲第1番。「フルート界のロックスター」とも呼ばれるジャコーだが、どんなモーツァルトを披露してくれるだろうか。 2019年にチャイコフスキー国際コンクール第2位を獲得して以来、着実

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