eぶらあぼ 2022.10月号
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 2002年に始まった「アジア オーケストラ ウィーク」は日本にいながらアジア各国のオーケストラを聴ける貴重な機会。注目点は、「自国のオーケストラ曲」「自国の若手ソリストとの協奏曲」「勝負をかける交響曲(管弦楽曲)」というプログラム三本の柱。国の誇りをかけた熱のこもった演奏は毎回大きな感動をもたらす。今年は3年ぶりに海外のオーケストラも参加する。10月5日、6日、7日の3日間は東京オペラシティが熱い。 初日は、アジアでもっとも古いオーケストラの一つで、メニューイン、オイストラフなどとも共演したフィリピンのマニラ交響楽団(1926年創立)が登場。指揮は音楽監督マーロン・チェン。ヒューストンの「アペリオ・ミュージック・オブ・ジ・アメリカズ」常任指揮者でもあり、MDR交響楽団、パリ管弦楽団のアシスタントコンダクターも務めた。 フィリピンの国民的作曲家ルシオ・サン・ペドロの「ラヒン・カユマンギ」が必聴。フィリピンの「わが祖国」とも言うべき叙情性と力感に満ちた交響詩。エルガー「チェロ協奏曲」は、5つの国際コンクールで優勝した若き天才チェリスト、ダモダール・ダス・カスティージョの卓越した演奏に期待したい。最70後にプロコフィエフのバレエ組曲「ロメオとジュリエット」(マーロン・チェン セレクション)が演奏される。 2日目は日本から、琉球交響楽団が登場。沖縄県立芸術大学教授で元N響首席トランペット奏者の故・祖堅方正が、県内に卒業生や沖縄出身者が活躍できる場を創ろうと2001年に設立。立ち上げに協力した大友直人は16年音楽監督に就任、オペラ公演や東京、大阪公演も実現させた。沖縄音楽を取り入れた作品の紹介こそ琉球響の使命と意欲を燃やす大友は、中村透「かぎゃで風 ~琉球古典音楽、古典舞踊とオーケストラのための~」と、琉球響が委嘱した沖縄本土復帰50周年に寄せた作・編曲家の萩森英明の新作で勝負に出る。 2010年ジュネーヴ国際コンクールで日本人として初めて優勝した萩原麻未は、得意のラヴェル「ピアノ協奏曲」で色彩豊かなピアノを披露する。チャイコフスキー「交響曲第5番」は、近年巨匠的な指揮で重厚感を増す大友の本領を聴きたい。マニラ交響楽団 10/5(水) 琉球交響楽団 10/6(木) KBS交響楽団 10/7(金)各日19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 日本オーケストラ連盟03-5610-7275 https://www.orchestra.or.jp/aow2022/マニラ交響楽団琉球交響楽団大友直人 ©Rowland KirishimaKBS交響楽団マーロン・チェンダモダール・ダス・カスティージョ萩原麻未 ©Marco Borggreveユン・ハンギョル 最終日は、韓国を代表するオーケストラ、KBS交響楽団が登場する。1956年韓国放送公社(KBS)によって設立。チョン・ミョンフン、ドミトリー・キタエンコ等が歴任した音楽監督に、2022年ピエタリ・インキネンが就任し、世界トップクラスのオーケストラを目指す。 指揮は若手のホープ、ユン・ハンギョル。2019年ネーメ・ヤルヴィ賞を史上最年少で受賞。ニュー・ブランデンブルク・フィルのカペルマイスターも務めた俊英。切れのあるダイナミックな指揮が素晴らしい。 J.シュトラウスⅡ「喜歌劇《こうもり》序曲」に始まり、ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」は、仙台国際音楽コンクール最年少受賞、ARDミュンヘン国際音楽コンクール最高位入賞などを果たした韓国のスーパー・スター、キム・ボムソリがヴィルトゥオジティを発揮するだろう。 国際的作曲家ユン・イサンの「交響曲第2番」は宇宙的とも評される壮大な作品。ユン・ハンギョルとKBS響が渾身の演奏を展開するに違いない。文:長谷川京介キム・ボムソリアジア オーケストラ ウィーク 20223年ぶりに海外のオーケストラが参加!

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