eぶらあぼ 2022.10月号
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Interview白井 圭(ヴァイオリン) × 横坂 源(チェロ) × 幣 隆太朗(コントラバス)日本の精鋭とドイツ人奏者による本格派の室内楽66 ベートーヴェンの七重奏曲、シューベルトの八重奏曲という古典派時代を代表する室内楽作品は、コントラバスを含む弦楽器群に管楽器群が加わる編成で、素晴らしい音楽的内容を持っている割に、日本ではあまり演奏されない作品だ。しかし、コンサートツアーのたびにそれらを取り上げ、現代に通じる作品の魅力を紹介し続けているグループがある。「ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ・シュトゥットガルト」である。その発起人である幣隆太朗(シュトゥットガルト放送響コントラバス奏者)、そしてこのグループに参加するヴァイオリンの白井圭(N響ゲスト・コンサートマスター)、チェロの横坂源という3人が多忙なスケジュールの合間を縫って集まり、2022年秋のツアーについて語ってくれた。 「このアンサンブルが生まれるそもそものきっかけは、僕が大阪のザ・シンフォニーホールで、ベルリン・フィルのメンバーによるベートーヴェンの七重奏曲の演奏を聴いて、なんて素晴らしい作品なのだろう、自分もいつか演奏したい、と思ったことでした。そこでシュトゥットガルトで知り合いだった横坂君に声をかけ、東京藝術大学でも同じ時期に在籍していて、サイトウ・キネン・オーケストラであらためて出会った白井君を誘い、そこにシュトゥットガルト放送響の管楽器の仲間たちが加わって、このグループがスタートしました」と幣は語る。2013年に「東京・春・音楽祭」で演奏し、その後、2014、15、16、18年と日本でツアーを展開している。 「実は2020年のベートーヴェン・イヤーにもツアーを予定していたのですが、コロナの流行で中止になってしまったので、今回は仕切り直しという感じです」と横坂。10月1日、佐賀からスタートする今年のツアーは、シューベルトの八重奏曲を中心とした構成、編曲作品を中心とした構成という2種類のプログラムで行われるが、注目されるのは、1974年生まれの作曲家J.M.シュタウトによる委嘱新作「YATTSU」が日本初演されること。その経緯について白井はこう語る。 「僕たちのグループの牽引役でもあるクラリネット奏者のディルク・アルトマンから、ベートーヴェンの生誕250年を記念して、このアンサンブルのルーツであるベートーヴェンにちなんだ新作を誰かに委嘱しようという話が出て、ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ・シュトゥットガルト10/4(火)19:00 浜離宮朝日ホール問 ヒラサ・オフィス03-5727-8830 https://www.hirasaoffice06.com他公演10/1(土) 佐賀/炎の博記念堂(0955-46-5010)10/2(日) 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール(0798-68-0255)10/6(木) 高知/四万十市立文化センター(四万十川国際音楽祭実行委員会0880-34-7311)10/7(金) 徳島/あわぎんホール(088-622-8121)10/8(土) 愛知/Halle Runde(052-671-3074)10/10(月・祝) 横浜市港南区民文化センター ひまわりの郷(045-848-0800)左より:幣 隆太朗、横坂 源、白井 圭僕が武生国際音楽祭でその作品の魅力を知ったシュタウトを紹介しました。彼はオーストリアでもっとも注目されている作曲家ですが、実はとても日本が好きで、そこからタイトルも少し日本的なイメージを持った作品になったようです」。しかし「指揮者なしで演奏するのはとても難しくて、コントラバスなどにもかなりのテクニックを要求する作品ですよね」と横坂。幣も頷いて「めちゃくちゃ難しい! でも、それぞれの楽器に聴かせどころがあって、やりがいのある楽しい作品です」と語る。作曲家のシュタウトも10月初旬のコンサートには顔を見せるらしい。 「その他はウッキ氏による編曲作品が多いですが、それぞれの楽器をフィーチャーした作品もあり、弦楽器と管楽器が集まったこのアンサンブルの魅力をよく知ってもらえる楽しいプログラムになったと思います」と幣。全部で7公演が行われるので、ぜひどこかで彼らの演奏に触れてほしい。取材・文:片桐卓也

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