eぶらあぼ 2022.10月号
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2番に権代敦彦の「無言のコラール集 ~ヴィオラとピアノのための~」を加えたプログラムが披露される。ブラームスの2曲のヴィオラ・ソナタはそれぞれシリーズの過去の演奏会でも同じコンビによりとりあげられているが、改めて両曲がセットで演奏される機会となった。共演を重ねて到達した円熟味豊かなブラームスを披露してくれることだろう。 権代の作品はブラームスにインスピレーションを得てふたりのために書き下東京芸術劇場マエストロシリーズトマーシュ・ネトピル(指揮) 読売日本交響楽団 次世代の巨匠が響かせる大作曲家への出発点11/20(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 https://www.geigeki.jp12/3(土)14:00 第一生命ホール 9/20(火)発売問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net65 東京芸術劇場と事業提携を結ぶ読売日本交響楽団によるコンサートシリーズに、“チェコの次世代を担う指揮者”トマーシュ・ネトピルが登場する。演目はマーラーの歌曲集「さすらう若人の歌」と交響曲第1番「巨人」。東京芸術劇場は、シノーポリ&フィルハーモニア管のマーラー交響曲全曲演奏で開館以来数々の名演が行われてきた、同作曲家の響きに相応しいホール。読響は、同シリーズの井上道義指揮によるマーラーの交響曲第8番、第3番、「大地の歌」で絶賛を博してきた楽団。そしてネトピルは、ボヘミア生まれのマーラーに強く共感し、その作品トマーシュ・ネトピルを得意としている指揮者…とすべてに条件が揃った公演だ。 ネトピルは、現在エッセン歌劇場とエッセン・フィルの音楽総監督、チェコ・フィルの首席客演指揮者を務め、ベルリン・フィルやウィーン国立歌劇場をはじめとする一流楽団や歌劇場に多数客演している上昇株。マーラーもエッセン・フィルと録音した交響曲第6番、第9番の明晰かつ劇的な演奏が高く評価されている。日本でも2019年読響との雄弁な快演で強いインパクトを与えておヴィタリ・ユシュマノフ ©Masaaki Hiraga読売日本交響楽団 ©読響り、相性の良い楽団と十八番作曲家を奏でる本公演への期待は極めて高い。 「巨人」はオーケストラの醍醐味満載の名曲だが、今回は前に「さすらう若人の歌」(日本を拠点に活動し、芸劇のオペラシリーズ等の実績も顕著なロシア生まれのバリトン、ヴィタリ・ユシュマノフの独唱も要注目)が置かれているのがポイント。同曲集の第2曲、第4曲の旋律が「巨人」で用いられるなど、両曲は密接な関係にあるので、続けて聴く意味はすこぶる大きい。左:小山実稚恵 右:川本嘉子 ©大窪道治ろした作品で、今回が東京初演。名曲に新作が加わることで、一段と新鮮な気持ちでデュオを聴く喜びを味わえそうだ。文:柴田克彦文:飯尾洋一小山実稚恵の室内楽 〜ブラームス、熱く深い想いをつなげて 第6回(最終回)小山実稚恵 & 川本嘉子 ピアノ&ヴィオラ・デュオⅢシリーズ最終回は信頼寄せる名手と紡ぐブラームスと権代作品 名実ともに日本を代表するピアニスト、小山実稚恵が第一生命ホールで開催してきたシリーズ「小山実稚恵の室内楽 ~ブラームス、熱く深い想いをつなげて」。その第6回「小山実稚恵&川本嘉子 ピアノ&ヴィオラ・デュオⅢ」が今年12月に開かれる。2018年9月にスタートした同シリーズが、今回でいよいよ最終回を迎えることになった。 このシリーズではブラームスの室内楽曲を中心に、小山がさまざまな演奏家たちと共演を重ねてきた。最終回では名ヴィオラ奏者、川本嘉子と3度目の共演を果たす。全6回中3回がヴィオラとの共演という「ヴィオラ密度」の高いシリーズとなったのは、ブラームスがヴィオラのための大傑作を残していることの反映でもあり、ふたりの奏者が互いに抱く信頼と共感のあらわれでもあるだろう。 今回はヴィオラ・ソナタ第1番と同第

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