eぶらあぼ 2022.10月号
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第976回 サントリー定期シリーズ10/20(木)19:00 サントリーホール第150回 東京オペラシティ定期シリーズ10/21(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第977回 オーチャード定期演奏会10/23(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp55 《ファルスタッフ》は究極の喜劇オペラだ。「オペラ王」ヴェルディの最後のオペラで、ほぼ唯一の喜劇。だがそれより重要なのは、この作品がまったく新しいオペラだということだ。会話劇がほぼそのままオペラになった斬新なスタイル。声を張り上げて歌うアリアがない(まったくないわけではないが)のは当然で、《ファルスタッフ》はオペラになった演劇なのだ。20世紀音楽の改革者ストラヴィンスキーも、ドイツ・オペラの権化R.シュトラウスも《ファルスタッフ》には脱帽した。ヴェルディは80歳を目前にして、オペラを改革したのである。大好きなシェイクスピアを題材に、終始観客を微笑ませずにはおかない軽妙で洒脱で人間的なコメディとして。 究極のオペラのマエストロである左より:チョン・ミョンフン ©上野隆文/セバスティアン・カターナ/砂川涼子 ©Yoshinobu Fukaya/中島郁子/須藤慎吾/小堀勇介/三宅理恵吾、小堀勇介、三宅理恵ら、歌い盛り聴き盛りの顔ぶればかり。《ファルスタッフ》の最大の聴きどころは、全曲を締めくくるフーガ「人間はみんな道化」だが、老ヴェルディがたどり着いたこの究極のアンサンブルを、この豪華メンバーで体験できると想像するだけで胸が躍る。 Viva Verdi! そう呟きたくなる瞬間が訪れるに違いないその日。今から、待ち遠しくてたまらない。13曲の「ダイシャクシギ」は少々神秘的な趣もあり、長大なこの曲集最後を飾る豊穣な音響も魅力だ。古来、鳥の声を愛でてきた日本人にとって、モダンな響きに彩られながらもどこか懐かしい記憶を呼び覚ます面もある名作である。エマールは2016年のイギリス・オールドバラ音楽祭で、鳥の鳴く時間に合わせて朝4時から翌深夜まで演奏を行う大胆な企画も成功させている。好奇心に満ちた知的なアプローチに支えられたエマール11/3(木・祝)15:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jpチョン・ミョンフンが、日本でいちばんオペラ経験が豊富なオーケストラの東京フィルと《ファルスタッフ》を演奏するのは、オペラファンにとって朗報以外の何ものでもない。聞くところによるとマエストロは《ファルスタッフ》を指揮するのは初めてで、とても力が入っているという。キャストも、イタリアの名バリトン、セバスティアン・カターナをタイトルロールに迎えるのをはじめ、砂川涼子、中島郁子、須藤慎のピアニズム。メシアンが描き出す自然に根ざした豊かな世界にぐっと私たちを引き込んでくれるにちがいない。©Marco Borggreve文:加藤浩子文:伊藤制子チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団歌劇《ファルスタッフ》オペラ演奏会形式究極のオペラのマエストロが挑む、究極の喜劇オペラピエール゠ロラン・エマール ピアノリサイタルメシアンのスペシャリストがひもとく「鳥のカタログ」 2017年のメシアン「幼子イエスにそそぐ20のまなざし」公演の至芸で、大きな話題を呼んだピアノのピエール=ロラン・エマール。幅広いレパートリーを持ち、20世紀以後の作品も得意なエマールだが、現代最高のメシアン解釈者として確固たる地位を占めている。その彼が、3時間にもおよぶ全7巻13曲から成る大作「鳥のカタログ」とともに、再来日を果たす。しかもこの1公演のみのために来日してくれるのだ。 エマールは、2017年に「鳥のカタログ」を録音し、そのすみずみまで磨き上げられた演奏が大きな話題となった。この畢生の大作には種々の高度な現代技法が詰まっており、メシアン自身が世界各地で採集し、緻密に表現した鳥の声が随所に聞こえてくるのに注目したい。第3巻第6曲「モリヒバリ」は、きらめくような楽句の冒頭から、思わず耳をそばだてたくなる。第7巻第

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