eぶらあぼ 2022.10月号
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第251回 土曜マチネーシリーズ 10/29(土)第251回 日曜マチネーシリーズ 10/30(日)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp51トとして刻む進境に接する機会がやってくる。三都市で開催されるリサイタルの前半はバロック音楽が中心。以前の実演で聴いたエマヌエル・バッハの記憶をたどれば、古楽風のスタイルにも配慮しながら即興的な装飾を大胆に施し、それが単なる添え物の域を超え、曲の世界観を掘り下げる効果まで生んでいたのが印象深い。現在の彼なら、そんな路線をさらに深みを増した笛で極めてくれることだろう。そしてリサイタルの後半は自家薬籠中のフランス音楽。共演はピアノの浦壁信二。愛知10/13(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp他公演10/8(土) 名古屋/三井住友海上しらかわホール(愛知室内オーケストラとの共演)(愛知室内オーケストラ052-211-9895)10/11(火) 名古屋/電気文化会館 ザ・コンサートホール(クラシック名古屋052-678-5310)10/15(土) 大阪/住友生命いずみホール(大阪アーティスト協会050-5510-9645)シルヴァン・カンブルランの名手、セリーナ・オットが登場する。多彩なトランペットの妙技が楽しみだ。 最後はフローラン・シュミットの代表作、バレエ音楽 「サロメの悲劇」。印象派とワーグナーを融合したとも言われる精緻な管弦楽法は、後の作曲家にも大きな影響を与えた。黙劇の付随音楽として作曲されたが、バレエ化にあセリーナ・オット ©Oliver Kendlたり大編成の管弦楽に編曲され、後に組曲に改訂された。今回はこの組曲版での演奏となる。R.シュトラウスのオペラと異なり、サロメは王の命で殺されるのではなく、最後は神の怒りにふれ天変地異の中に消滅する。この曲の録音もあるカンブルランの真骨頂を聴けるだろう。文:長谷川京介文:木幡一誠©ヤマハ株式会社室内オーケストラの公演(10/8)で演奏するイベールの協奏曲ともども、圧巻の名技を堪能してみたい。シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団マエストロ十八番のフランス・プロで3年ぶりに登場 2019年3月に常任指揮者を退任したシルヴァン・カンブルラン(現・桂冠指揮者)が3年ぶりに読響に帰ってくる。10月29日、30日の2日間、東京芸術劇場でのコンサートは得意のフランス音楽が並ぶ。最初はビゼー「アルルの女」 第1組曲、第2組曲。全曲が演奏される機会は意外に少ない。力強い〈前奏曲〉や美しい〈アダージェット〉、優美な〈メヌエット〉、プロヴァンスの太鼓とともに熱狂していく〈ファランドール〉など、ビゼーの旋律美と色彩感をカンブルランが存分に聴かせてくれることだろう。 ジョリヴェ「トランペット協奏曲第2番」は、コントラバスと8本の管楽器、ハープ、ピアノ、パーカッションにトランペットソロが加わる編成で、ジャズの要素も取り入れた野心的な作品。モーリス・アンドレを生んだ最難関のARDミュンヘン国際音楽コンクール・トランペット部門で、史上初の女性にして弱冠20歳で第1位となった、オーストリア出身マチュー・デュフォー フルート・リサイタルベルリン・フィル元首席奏者がソリストとしてさらなる飛躍へ 1999年からシカゴ交響楽団の首席をつとめ、2015年のシーズンにはベルリン・フィルの同じポストへ移籍を果たす。1972年パリ生まれのマチュー・デュフォーは、2歳年上のエマニュエル・パユ(親しい友人同士)と並ぶ、仏語圏生まれのフルーティストとして“ワールド・スタンダード”なレベルの頂点にある偉才だ。 リヨン国立音楽院での恩師マクサンス・ラリューから受け継いだ“フレンチ・スクール”の美質を体現する、涼やかで均整のとれた音色。そこに広大なダイナミックレンジとパワフルな機動性が同居を果たすのは、世の東西を代表するスーパー・オーケストラを渡り歩いたキャリアの賜物でもあろう。フレーズの作り方は繊細かつ緻密。しかし音楽が神経質な様相とは無縁なところにラテン的な気質の反映も見てとれる。 2022年にベルリン・フィルを退団したデュフォーの“今”に、つまりはソリス

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