eぶらあぼ 2022.10月号
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31取材・文:香原斗志 写真:吉田タカユキ宮崎「私も以前はコンサートの司会などで参加することがあったのが、少し途切れていました。今回アンバサダーとして携わる機会をいただき、改めて生の音をその場で味わいたいなと、ワクワクしています」福井「演劇は台詞の間や長さ、抑揚などを俳優が作りますけど、私たちの場合、作曲家が間も抑揚も規定しています。だから何分後、何秒後に悲劇が起きるかがわかっていて、そこに緊張感もある。そんなところも聴いていただけると、もっと楽しめると思います」宮崎「でも、そうして作曲家が規定していても、何千人、何万人もの歌い手が表現して、それぞれ色が全然違うわけですよね」福井「コンサートにいらした方は、演奏者の呼吸や息遣いを意識して、それを一瞬感じるだけで、また違う世界が見えるかもしれません」宮崎「すみずみまで全部見て、感じなければ、という気持ちになりますね。そうでなければもったいない」 しかも、各公演はさながらクラシック音楽のオールスターゲーム。宮崎「それが自分の街の球場(ホール)まで来てくれるのですよね!」福井「ですから昨年もお客様の期待度、楽しもうという意欲が普段のコンサートとはまったく違うのが感じられて、私たちが強く勇気づけられました」宮崎「それは一番幸せな状態ですね。すばらしい演奏になるかどうかは、演奏する側と聴く側の関係で決まるところがありますものね」 ところで、「小学生は入れるのかしら」と宮崎。10月2日の沖縄公演は3歳から、その他の公演は小学生から入場が可能だ。福井「私も小学生のとき先生に言われ、地区の代表として歌ったりして、そういうこともあって音大を受験しました」宮崎「全員にそういうストーリーがあって、それが集まって一つの音に。ドキドキしますね。子どもたちにも『これが好きだ』って思ってもらいたいですね」Informationクラシック・キャラバン2022クラシック音楽が世界をつなぐ 〜輝く未来に向けて〜9/18(日)〜12/22(木) 全国13地域21公演福井 敬出演公演『華麗なるガラ・コンサート』9/29(木)18:30 サントリーホール■ 1002(イチマルマルニ)03-3264-0244https://www.classic-caravan.com※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。日本を代表する演奏家が集結し名曲のいいとこ取りクラシック界のオールスターゲーム コロナ禍でダメージを受けた業界というと飲食や旅行が挙がるが、音楽業界への影響も同様だ。演奏者は芸を披露する場を、聴き手は生の音に触れる機会を奪われてしまった。そんな困難を乗り越えるために昨年、全国に幸福を届けた「クラシック・キャラバン」が今年も開催される。 「クラシック音楽が世界をつなぐ 〜輝く未来に向けて〜」と題し、9月18日の愛知と静岡を皮切りに全21公演。華やかなガラ・コンサートの数々で、北海道から沖縄まで全国13地域がつながれる。プロジェクト・アンバサダーに就任した俳優の宮崎美子と、昨年に続き出演するテノールの福井敬が、魅力あふれる企画の意義と価値を語りつくした。福井「私たちはお客様を前にして生の音を届けるのが信条なのに、コロナ禍でそれができなかった。演奏家は大変でしたが、聴く機会を奪われたお客様も同じでした」宮崎「空気が揺れるのを直に感じるのが大事ですよね」福井「だからクラシック・キャラバンは本当にありがたい。ガラ・コンサートとは豪奢な美味しいとこ取り。みなさん待ち焦がれていたと思いますが、それを手に取って味わえるのは極上の喜びだと思います」宮崎「本当に贅沢ですね。一流の演奏家の方々が自分たちの近くに来てくれて、いいとこ取りの演奏をしてくれるのですから」福井「オーケストラ(スーパー・クラシック・オーケストラ)は、演奏の機会を失っていたフリーランスの演奏家の方々によって構成され、昨年出演したときも、みなさん意気込みが全然違いました」宮崎「既存のオーケストラと違うメンバーだから新鮮ですね」福井「同時に真剣勝負で、ハーモニーを一緒に作ったときのすばらしさは何物にも代えがたいです」 ところで、宮崎は日ごろどんな音楽を聴いているのだろう。宮崎「作業用BGMとしてクラシック音楽を心地よく聴いたりしますが、聴いたことがある曲が流れて『これなんだっけ?』と思っても、通りすぎてしまいます。クラシック・キャラバンはそんなときも曲名を確認できて、クラシック音楽を聴く入口にもなりますね」福井「しかも各コンサートには司会者がいて、曲のエピソードを話してくれるので、どう聴けばいいのかもわかる。好きだったのに生の演奏を聴けなくなっていた方にも、初めて聴く方にも、こうして糸をつなぐことがすごく大切です」

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